試合中の闘争心溢れる表情も、自主練中の子供みたいな表情も、チームメイトに弄られるときの情けない表情も、どれも俺を捉えてやまないものだけど。
笑った顔が好きだ。好きな奴が相手なんだから、そう思うのは当たり前だろう。
でもそれだけじゃ足りないと、心のどこかが声をあげる。
歪んでる?そうかもしれない。でも、愛してることに違いはないんだ。
しっとりと光を湛えた瞳がゆらゆらと揺れる。重なった視線はふらりと逸れかけ、顎をきつく掴むことでそれを留めれば、ますます瞳の水の膜が張った。
「逸らしちゃだめでしょー、椿」
「か、んとく…」
震える声、潤む目、染まる頬。
緩く噛み締められた唇は紅く、ふくりと柔く、本人の自覚は無しにこちらを煽る。
「どうした?」
「…っ」
「言いたいことあるんだろ?言ってみ?」
「ぁ…、」
はくはく、と口が数度開かれる。が、声にはならない。
しかしその分、目が訴えてくる。どうしたいか…いや、どうされたいか。
にぃ、と自然と口角が上がるのがわかる。
恥ずかしがり屋の恋人。それと同時に欲しがり屋の恋人。
欲しいのに、そうと言えない可愛い奴。
「おねだりの仕方、教えたよな。…返事は?」
「…っ」
きゅ、とまた唇が噛み締められ、さらに赤みを増した。痛々しくも見えるそれは、やはり俺の情を掻き立ててやまない。
「つーばき?」
「、…」
涙の浮かぶ目がすがるようにこちらを見る。言いたいことはよくわかる。でも、俺からは動かない。
与えてばかりの優しいだけの男じゃないんだ。
欲しがられたいだろ、愛されてるっつー、証、ていうかさ。
何もしない。でも何でもしてやる。椿が望めば、な。
「監督…」
「ん?」
「…っ」
するりと腕が首に回され、ぐいと引き寄せられた。
触れ合う直前にふわりとふたつの唇が綻んだ。
---------------<キリトリ>-----
ツイッターで昨日(勝手に)盛り上がったネタから。
指導上手な監督さんです。