担当教科は英語。受け持ちクラスは無し。だからC組の東方仗助が俺の授業以外は出席していないのを今しがた知った。

「 父親がアメリカ人だとかで…だからですかねえ、」

授業は真面目に出席しているが、テストの点数がどうにも悪い。補習でもしたほうがいいのかと雑談混じりに他の教員に相談していたら「そもそも授業に出席しないような生徒が補習に参加するんですかね」と返されて知った。髪型は今時リーゼントだが授業態度は真面目だし、これと言った噂も聞かなかった。ただ、テストの点数が悪いだけの生徒だと思っていた。

「空条先生からも他の授業にも参加するように言ってくださいね」

C組の担任が困り果てたようにボヤいたのとは関係なく、やはりこのままではまずいだろうと思って今日の授業の終わりに東方に残るように伝えた。

「何スか」
「…テスト、毎度一桁はさすがにまずいぜ」
「…補習ってことっスか」
「ああ。」

東方の前の席に座り、まずは英語の教科書を広げて間違えやすいところをマーカーで引いていく。

「父親がアメリカ人なんだってな」
「そっスけど」
「俺も母親がアメリカ人だ」
「そーなんスか。それで?」
「それだけだ。」

勉強の合間に雑談を挟む。東方は根を詰めて覚えるタイプではないと思ったからだ。

「今日はここまで。」
「…また、明日もやるんスか?」
「ああ、そのつもりだ。…不満か?」
「…べつに」

そう言うと机の上に広げてあった教科書を鞄にしまって、軽く会釈をして帰っていった。

授業は無遅刻無欠席で態度も真面目だが、授業はまったく聞いていなかったようで、予想よりも長引きそうなこの特別補習に「やれやれだ」と思わず口から零れた。





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