ほんのりと冷たい指が頬を撫でた。
「仗助、起きろ。朝だ」
「…う、…じょーたろさん?」
今朝、夢見たんです。承太郎さんの。
朝、起こしてくれるんです。
俺の髪を掻き上げて、おでこ撫でるんス。
んで、…そんで。
「ほお。…それで?なんだ?」
「あ、いや…その、……忘れました。」
笑って誤魔化したら、承太郎さんは「そうか」とだけ返して本を読み始めた。
俺には到底読めそうにない英語ばかりの本を頬杖をついて顔を半分隠して読んでいる。
「夢じゃあないぜ。」
「え?」
ぽつりと零れた言葉に、しばらく思考が停止した。何度かその言葉を反芻してようやく意味を理解すると、心臓の音が大きくなって、頭がぐあんぐあんと揺れる。
「 ま!…じ、ですか…」
想像以上にデカい声をあげてしまった。承太郎さんは涼しい顔をして本を読みながら頷く。
「…おいおい、何も泣くことはねえだろ」
頬を情けなく伝う涙が拭われる。
泣くことないって、承太郎さん、そうは言いますけど、どれだけあの言葉を欲したと思ってるんスか。どれだけ、恋い焦がれたか知ってるんスか。
「俺もです…っていうのはズルいですか」
「ああ。」