「優しくするって言ったらセックスさせてくれんの?」
その言葉と表情からは微塵も優しさなど感じとれなかった。
ただの暇潰しか性欲処理だろう。おそらく前者。
「ふざけるな」
俺の中にあるのはプライドのみだ。金も名誉もこのプライドのためにあるようなものだ。
「でもそう言う噂ばかりじゃないか」
くだらない。気にも留めていなかった。俺の実力への嫉妬だろうから。そんな噂をあっさりと信じるのかこの男は。ならばこいつは、噂通りの男と言うことだ。
「僕のこと嫌い?」
「大嫌いだ。」
「好きになることはありえない?」
「…絶対にないな」
俺の答えに対してにやにやと笑い、気味が悪い。
なんでも持っていて、それをひけらかしながら、何も持っていないと言うこいつが大嫌いだ。
突然横から伸びてきた手が俺の首を締め付ける。ギリギリと指が喉仏の下あたりを圧迫するあたり、ああ、本気で殺す気はないのだろう。
それともただ知らないだけ?
顔が引き寄せられて、唇が重なるような事があれば噛みちぎってやろうと、牙を尖らせた。
ジョニーはちらりと出した舌で自身の唇を舐める。癖なんだろう、すこし荒れていた。
「はは、」
短く笑って首から指が解けた。気づかれないように静かに深く息を吸う。
ジョニーはそっぽを向くとそのまま愛馬とともに歩いて行った。
一体なんだったんだ。
何が、したかったんだ。
全く意味がわからない。
意味が、分からないが、せっかく尖らせた牙を食い込ませられなくて、むず痒い。