「仗助?」
いつものカフェ、ドゥ・マゴで康一と億泰の三人でくだらない話しをしていたら、名前を呼ばれて振り返る。
「承太郎さん!」
わざわざ呼び出した二人を放って承太郎さんの元へと駆け寄った。
「何してんスかあ?」
「…ああ……今日は制服じゃあないんだな」
じぃ、と俺の服を見つめる。
いつまでも金額にビビってたら意味ねえ、と思い切って買ったブランドの服。まあ、その所為でおふくろに宝くじの件がばれて口座が封鎖されちまったんだけどよお…。
承太郎さんとのデートで着たかったが、いつもよりワンランク上の服が何と無く気恥ずかしくてまずは、と康一と億泰に見せる名目で二人を呼び出していた。
「似合いますか?」
「似合わねえ」
億泰に「仗助、お前承太郎さんの前だと顔緩みっぱなしだぜ」と言われたのを思い出す。今の俺はいつもより締まりのない顔をしてただろうなあ、それが自分でもはっきりと分かるぐらい引きつる。
そんな俺を微かに見下ろながら承太郎さんは踵を返した。
背伸びをして買った服がみっともねえ。
「嘘だ。」
しおしおと頭を垂れたとき、それが聞こえて顔をあげる。
「今、何て言いました?」
「…。」
歩き出す承太郎さんを追いかける。
ねえ、としつこく聞くと「やれやれ」と言わんばかりに帽子を深くかぶり直した。
「億泰と康一くんは放ったままでいいのか?」
言われて振り向くと、ひらひらと手を振っている。手を振りかえしてまた承太郎さんの背中を追った。
「大丈夫みたいっス」
「…そうか。」
「承太郎さん、あの、」
なんで嘘ついたんですか。
そう聞くと今にもスタープラチナからオラオラが出そうな、そんな鋭い殺気が篭った視線で俺を射抜きながら承太郎さんはゆっくりと唇を動かす。
「ただの嫉妬だ。」
短く簡潔にそれだけ言うと再び背中を向けてしまった。
「すみません、承太郎さん、」
「全くすまなそうな顔をしてねえぜ」
「へへ、」
億泰よお、顔が緩むのなんて仕方ねえだろお。そんだけ好きなんだからよ。