じじいの形見のひとつにアルバムがあった。じじいのアルバムかと思って開いたら中は俺の写真ばかりだった。
おふくろに聞いたら、俺が生まれたばかりのころバカみたいに高いカメラを買って一日中撮っていたらしい。写真を撮っては俺の父親がのこのこ会いに来たとき自慢してやるのだと言っていたそうだ。
「確かカメラもまだ残ってるはずよ」そう言われて遺品の中を探すと確かにあった。古いカメラ。昔は最新だったこのカメラも今では重たい流行遅れのカメラ。
アルバムをぱらぱらと捲ると小学生のころでアルバムは終わっていた。

ファインダーを覗いた世界はずいぶんと狭い。

「懐かしいカメラだな」
「じじいの形見なんス」
「…そうか」

承太郎さんのところへ持って行くと興味深そうにカメラをいじり出した。

「壊れてるのか?」
「そおみたいっスね」

落としたんじゃないんスかねえ、と言うと「直さなかったのか?」と首をかしげる。

「俺じゃあ直せないんです」

フィルムを巻く歯車が固くて回らない。正直、じじいを直した時みたく完璧に直したはずの物が動かないのは辛い。
だから直そうとも思わない。

「怖いか、仗助」
「なんのことっスかあ」
「何でも。ほら、直ったぜ」

無造作に投げ渡されたカメラの歯車はカリカリと綺麗に回るようになっていた。

「歯車が外れていただけだ」
「…ありがとうございます」

あんまりにも簡単に直って拍子抜けした。使う人間がいなくなってから直ったって遅いのに、とも思ってしまった。





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