声を出して笑ったのなんか何年ぶりだろうか。可笑しくてたまらない。止めどなく止めどなく笑いが漏れる。始めて味わう感覚だから、正しくは分からないが、たぶん、これが。
「…ちょっと、もー!笑いすぎですよ、承太郎さん!」
自分から仕掛けてきたくせに仗助は不満そうな声を上げた。
「悪い」と短く謝って笑いを押し殺す。
「まさかそんなに笑うとは思いませんでした」
「俺もだ。」
ふう、と一息着いて仗助の顔を見る。唇を尖らせて俺を睨んでるようにも見える目をしていた。
「泣いた方が良かったか」
「…そおー言うわけじゃあないっスけどお、」
歯切れの悪い返事をして視線を泳がす。俺にどんな答えを求めていたのかは分からないが、少なくとも俺は絶対にこいつが満足するような反応はしてやれない事だけは分かった。
「馬鹿な事は軽々しく言うもんじゃねぇぜ。」
「馬鹿な事じゃないっス」
そうか、と言おうとしたら何故か目頭が熱くなってしまい、奥歯を噛み締め押し殺した。
「承太郎さん、さっきのは嘘ですよ」
「ああ、分かってる」
「…嘘付いてすんません」
「分かってたからべつにいい。」
そうやって俺の愛を確かめているうちはまだ可愛いものだ。頬を撫ぜてやるとくすぐったそうに目を細めた。
俺、明日死ぬかもしれません。
そんなのはもうずっと前に覚悟している。
この因果に巻き込んだ時から、謝っても謝りきれないほど、仗助の人生を狂わせた。
「明日死んでも後悔するなよ、仗助」
「…っス」
幸せすぎて目の前を見失うな、俺。