今朝は身体が軽い。ベッドの上で大きく伸びをしたあと珈琲でも淹れるかと足を下ろした瞬間、ドアチャイムが鳴り、どんどんどん、とけたたましくホテルのドアが叩かれた。
モーニングコールにしては随分と乱暴だ。

警報装置が作動したら面倒だ。無視もできずにドアに近づくと今度はドアノブががちゃがちゃと動く。開かないと分かるとまたドアが叩かれた。

ドアスコープでもあればこのはた迷惑な輩が誰だか確認できるんだが…生憎ここのホテルのドアには付いて居ない。まあ、見なくとも誰だか想像は出来るがな。

がちり、と金属でできた鍵を回すのとほぼ同時に再びドアノブが回り乱暴に開けられる。

やれやれ、やはり、仗助か。

こんな朝早くに一体何の用だ新手のスタンド使いでもきたのか、とりあえず、清々しい寝起きを邪魔されたことについて文句を言ってやろうとすると、仗助のクレイジーダイヤモンドが俺を抱きかかえて再びベッドへと連れ戻された。

「承太郎さん大丈夫っスか?すんませんっ、俺、留守電気づくの遅くなって、今頃…っ」

留守電…何のことだ?
その事を聞く間もなく、布団の上にゼリーだの市販の風邪薬だのがぶちまけられていく。

「ゼリーとかヨーグルトとかお腹に優しそうなの買ってきたんスけど、なんか食べられます?あ、今熱何度ぐらいっスか?」

そう言うと、ぐっと顔を近づけて額を合わせた。ほとんど温度差は無い。
仗助も訝しそうに眉を寄せて、しばらくそのままぐりぐりと額を合わせていた。

「あれ?熱無い?」
「熱なんか元からでてねえぜ」
「え、だって…」

仗助は携帯を取り出し画面を見てすこし考える仕草をしたあと「あんたいい加減にしてくださいよ」とどこか嬉しそうに言った。

「まあ、寝ぼけてただけならいんスけど。」
それじゃあ珈琲ですよね?

布団の上を散らかしたまま仗助は珈琲を淹れに側を離れた。
その間に枕元に置いてある自分の携帯を確認する。
確かに昨日の深夜、仗助への発信履歴が残っていた。かけた記憶はない。

「でも、まあ、念のため…というかせっかくだし今日は一日俺が看病しますね」

淹れたての珈琲を俺に手渡すとベッドの上のものを両腕に抱えて備え付けの冷蔵庫へと運ぶ姿を見送る。

淹れたての珈琲が勝手に出てくるのは悪くない。

「…そうか。なら今日は存分に甘えるかな。…よろしく頼むぜ」

ばらばらと両腕に抱えていたものを盛大に床にぶちまけながら仗助は踞ってさっきと同じ台詞を今度は真っ赤になりながら呟いた。

「もー、ほんと、いい加減にしてください」

くつくつと笑うと、笑わないでください、と手近にあったゼリーを投げられた。




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