好きです。好きなんです、承太郎さん。だから、お願いです、俺を見ないで。

背中からぎゅうと抱きついてなんて勝手なことを言ってるんだ。
それでも言われた通り振り向かずにいると、締め付けていた腕はそろそろと離れて背中にぴったりと感じていた仗助の胸の熱さも消えた。でも、仗助はまだ後ろにいる。

「仗助。」

名前を呼んでも返事をしない。後ろに静かに立っている。
ゆっくりと振り返って仗助を見た。深く俯いていて表情は見えない。

「…俺もだ。」

ぴくり、と頭が動いた。数秒の沈黙。

「…ひどいっスよ、承太郎さん、見ないでって言ったのに」

渇いた笑い声を漏らして、仗助は俺を見上げた。
「俺もだ。」告白の返事にそう言ったのに仗助はちっとも嬉しそうな顔をしていなかった。愛想笑いのように張り付けた無理やりの笑みでこの場をやり過ごそうとしている。

俺が不愉快そうに眉を顰めると、仗助は僅かに震える唇で言った。

「それに、そんなん言われたら俺…、あんたの人生が欲しくなっちまいます」

嗚呼、くれてやるさ。そう簡単に言えないのを仗助は知っていた。
するり、と俺の横を通りすぎて自宅の方へと歩いて行く。
ホテルは反対方向。あの丸まった背中を追うのなら、俺は言わなきゃあならない。くれてやると。
あいつがいつも見たく笑うなら言ってやりたい。そう強く思っているのに、足は動かず、仗助の姿がだんだんと遠くなるのを後悔しながら見送った。





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