私は、自分が涙を流していることに気づかなかった。

戻ったとき、ブチャラティは倒れたままだった。ぐったりと倒れていたけど、どうしてか彼は私たちが勝った事を知っていてからかってるのだと思った。
逆に驚かせてやろう。大丈夫?と声をかけて心配そうに近づいて、わあ!と驚かすのだ。口元を歪めて駆け寄る。
わあ!と肩を揺する。彼は黙ったまま。
もうばれてるのよ、起きて、さあ、勝利を祝いましょうブチャラティ、と名前を呼んでも反応はない。

身体が冷たい気がする。

あ、ああ、本当に倒れているのだわ。彼は血を流し過ぎて貧血で意識が朦朧としているのだわ。早く、一刻も早く救急車を呼ばなくちゃ。今ならきっと間に合うわ。

「、ミス、タ…救急車ッを、」

嫌だわ、声が震えてる。ミスタの顔が何とも言えない表情に歪みながら携帯を差し出した。指が震えて上手くボタンが押せない。
液晶パネルにぽたぽたと雫が落ちた。さっき全力で走って、今激しく心臓が脈打ってるから、きっとこの滴り落ちているものは噴き出した汗に違いない


ボタンを押さなかったのに、救急車のサイレンが聞こえた。私はここよ、と立って両手を上げようとしたのに、先ほどの疲労ゆえか足ががくがくと震えてブチャラティの上に倒れてしまった。

冷たくて、固い。

男の人とは私たち女とは違って筋肉の固さがある、けど、これは。

慌てて起き上がると朝日にも似た金髪が目の端に映った。そうよ、そうだわ!ジョルノ!
ジョルノなら確実に助けてくれるわ!
どうして私、ジョルノのことをすっかり忘れていたのかしら?いいえ、ジョルノを忘れていたと言うよりも、ジョルノの能力の治癒力を忘れていたような。
生きているなら助けられる一番の可能性を忘れていたかったような。

「っジョ、ジョル、ノ…ブチャラっティ、を、早く」

ゴールドEでブチャラティを助けて、が言えなかった。ジョルノは堪え難い苦痛をお腹の底で抱えているような、息が詰まるような表情をして、ハンカチをただ差し出した。

そこでようやく私は自分がぼろぼろと止めどなく、泣いているのに気がついた。私は、ブチャラティの元へと走り出したときから泣いていた。
助かったからではない。
何故か私は本能的に彼が死んでしまったことに気づいたのだ。肉親でもないのに。

私は、ハンカチを受け取って自分の涙を拭かずに、ブチャラティの顔の汚れを拭った。穏やかだわ。私はこんなにも心乱れているのに、そこにいる彼はとても穏やかな表情をしていたのを知って息が詰まった。




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