時の止まった小道にスケッチブックと愛用のペンを持って行く。
「露伴ちゃんまた来たの?」
鈴美お姉ちゃんは今日もいる。
「ああ。幽霊とこうして話すことなんかこれから先あるか分からないですから。」
知りたいことすべて聞き出しておこうと思って。
真新しいスケッチブックを開いて一ページ目からペンを走らす。
ふうん、と鼻を鳴らして鈴美お姉ちゃんはブロック塀にもたれ掛かった。
ここには気の利いたカフェも、センスの良い中庭もない。あるのは廃れた家屋ばかり。
「もう露伴ちゃんのほうが年上なのね」
「精神年齢は鈴美さんの方がずっと上ですよ」
そんなこと女の子に言うとモテないよ、と16歳で時の止まってしまった鈴美お姉ちゃんは言う。
生きていたら31歳か。生きていたらもう結婚してしまっているのかな。
「鈴美さん、」
「なあに?」
「…また来ます」