ペコはその細い腕と一本の竹刀でいつも別の組の連中やそこらのヤンキーから俺を守ってくれていた。
「坊ちゃんは堂々としていればいいのです」
女なんかに守られてちゃあ示しがつかねえ、そう理由づけてペコに無茶をしねえよう言ってもちっとも伝わらねえ。
「私は貴方の道具なのですから」
何の問題もありませんよ。
ペコの名前が超高校級の剣道家として広まるのは早かった。それに引っ付くように広がる俺の超高校級の極道の呼び名。
「いいか、俺らはこの門の先からは他人だ」
そしたらもうお前は俺のために危ない目に遭わない。そして俺のことを坊ちゃんだなんて呼ばない。自分を道具だなんて言わない。
特別でなくなるのは寂しい気もするが、普通の同級生になりたかった。
ペコと普通の同級生でお互いそれぞれの青春を謳歌して、ペコが自分を道具だとか言わずにこの好意に気づいてくれたら最高だ。
「他人になっても私は坊ちゃんの道具ですよ」
ぼそり、とペコが何かを呟いた。振り返ると薄っすらと笑みを浮かべているだけだった。