「待っていたんですか?」

教室にお弁当箱を忘れたことに気づいて戻ってきたら夕暮れに染まる四角い空間には坊ちゃんがぽつん、と机の上に座っていた。

待っていたのか、と聞いてからはっとする。
別に私を待っていたわけじゃないかもしれない。ただ、家に居たくなくて此処で時間を潰していたのかもしれないし、物思いに耽っていただけかもしれない。
自分の失言に教室のドアレールを越えられないでいた。

「おう、こいつ忘れてたからな。戻ってくんじゃねーかと思ってよ」

軽く上げた手には私のお弁当箱があった。にやり、と笑う坊ちゃんに、私はうまく笑えず口元をいびつに歪めただけだった。

「ありがとうございます。坊ちゃんはお優しいですね」
「んなことねーよ。それに久々に一緒に帰るのも悪くねーしな」
「…そうですね」

それではそろそろ日も落ちて暗くなりますから手を繋ぎましょうか、と言うのは高校生になった私たちでは少々不自然でしょうか。
どうしたら自然に手が繋げるのかを考えながら伸びていく影をただ二つ並べて帰った。



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