「大丈夫?」

何の気まぐれか、私はいつもは別々で眠る恋人のベッドルームへと忍びこんでいた。この夜がとても寂しかったわけでも怖かったわけでもない。強いて言うならば何かに引き寄せられるように私はそこへと足を運んでいた。
そしたら恋人は汗をぐっしょりとかいてうなされていたのだ。

「…あ、ああ、うん、」

ぼんやりと目を覚ました凪斗は右手でお腹をさすって必死に呼吸していた。

「…とても、絶望、的な…夢?」

うわ言のように零した彼の頭を撫でながら「ええ、そうよ」と返す。額の汗を拭おうとしたけどあまりの量にぬるりと滑るだけだった。

「、どうかした?こんな夜中に」
「特に理由はないわ。何と無く」
「はは、そうか。だからか」

あんなに汗をかくほどの、夢とはいえ絶望的な恐怖を味わったはずなのに彼はのんきに笑った。

「来ないほうが良かったか?」
「まさか!あのそっけない君がこんなゴミ屑以下の僕に添い寝してくれるなんて、悪夢じゃ足りないぐらいだよ!」
「…添い寝するなんて一言も言ってないけど」

凡人の私にとってはあの希望ヶ峰学園に通っていた凪斗の方が凄いのに。その凪斗がゴミ屑以下なら私は何?

「…君が何の才能もない、溢れる無能の一人だとしても僕の特別になってしまった事には変わりないんだよ」

凪斗は私の心を読んだように真っ直ぐ私を見つめてそう言った。

「それじゃあ、もし私が死んだら凪斗にはどれ程の幸運が訪れるのかしら」
「彼女の死をどうでも良いと思える程の幸運か…」
「嬉しそうに考えないでよ」
「ははは、ごめん、ごめん!でも今のところ思い当たらないや」

にっこり、のんきに笑いながら彼はきっぱりと言い放った。
本当にそうだろうか。心中私の殺害計画を企てていそうだ。

「凪斗が望む希望になれるとしても?」
「もちろん!それも考えたよ。でもね、今の僕には君がいない世界がどう希望的なのか想像ができないんだ」
想像できないほどの幸運なんてそそられちゃうけどね。

するり、と凪斗の指が私の喉仏を撫でた。盲目的に凪斗を好きだったら今すぐ何処かの屋上から飛び降りて、飛び切りの幸運とやらをプレゼントできるのだけど、それができない私はどこまでも凡人


「貴方の為には死ねないから、せてめ悪夢を見ないように私は自分の部屋へ戻るわ」
おやすみ、良い夢を。

きしり、とスプリングを軋ませて立ち上がり部屋をでる。

どうしたら私は貴方を不幸にさせないですむのかしら。









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