言葉に心が篭らない。
大好きだから、大好きだと言っているのに、なぜか嘘みたい。
それが積み上がって本当が嘘になってしまって、私は嘘で塗り固められていって。
「大好きよ。」
何の脈絡もなく言う。
とても静かで変わらない心音で言う。
言っていないとこの気持ちが消えてしまいそうだなんて。
真っ黒な瞳を私に向けてイルミは「俺も好きだよ」と。瞬きもせずに。
お互い社交辞令を言ってるみたい。
「嘘じゃない」
「うん」
「本当に本当よ」
「うん」
「好きだわ、」
「俺も。」
自分の気持ちがわからなくて不安。出会った頃のときめきがないからかしら。
ときめきがなくなったらこれは恋じゃないの?
「俺のこと嫌いって言ってみれば」
もしくはどうでもいい、とか。
相変わらずのポーカーフェイスで彼が言う。私は想像だけした。イルミに「嫌い」と言う私、変わらぬ表情で「そう」とだけ答えるイルミ。
「…私のこと好きなら泣きなさいよ」
想像の中の彼に言った文句が口から零れた。
「きみに嫌いって言われたら泣くかも」
現実の彼は私の身勝手な一言に律儀に答えてくれた。それじゃあさっき何であんなこと言ったの。
あのイルミが泣くなら一言言ってみたい気もするけど、イルミが泣いてしまうのなら言いたくないとも思った。