優しくされると良いかもと思ってしまう。好きだと言われると私もそうかもしれないと思ってしまう。目が合うとときめいてしまう。

それぐらい惚れっぽいわたし。

「俺のために死んで?」
「あの、ごめんなさい、私…恋人がいるので、貴方のためには死ねません」
「じゃあ、そいつが死ねばいいの?」

何を言っているの。好きな人を殺した人を好きになるはずがないじゃない。
呆れ返って黙っていると、目の前の男の人は無表情のまま言う。

「そいつの何処が好きなの?」
「何処って…優しいところ」
「殴るのに?」
「…暴力は関係ないです」

そんなこと、もう何度も何度も元友人に言われた。そんな大きな痣をつくってどうして好きでいられるのか分からない、と皆私に呆れ返って離れて行った。
女友達なんてそんなもの。私には好きな人たった一人がいればいい。

「…殴るのが理由で別れるのなら、死ねと言う貴方とはますます付き合えません」
「俺は暴力は振るわないよ」

彼は、嗚呼言い方が悪かったね。と顎に指先を添えた。綺麗な人差し指。

「一般的には結婚してって言うんだっけ?」

本当に?うそ、どうしよう、いけない、嬉しいだなんて思っちゃ、駄目。でも、彼に結婚の話をすると打たれるのに。

「まあ、どっちにしても断ったら殺すけど」
「脅しているんですか」
「まさか。取り引きだよ」

彼の事を思い出すと腫れた頬がつきり、と痛む。手を当てて顔を思い浮かべて小さくさよなら。

「なら、仕方ないですね」

私はメール画面を起動する。別れて、の一言を書いて送信ボタンを押せば終わり。

新しい愛しい人に腕を回しながらぽつん。

「頬が痛いわ」
「あいつ殺してくる?」
「優しいのね、嬉しい」



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