イルミの唇が動いた。

何を言っているのか聞こえなかったのに、私は動く前から振られるのだと解っていた。それなのに彼が無音の中言い終えて背中を向けて歩き去っていくのをただぼんやりと眺めてた。

「…っ、」

がたん、と電車が大きく揺れて目が覚めた。私の心臓は思ったより落ち着いていて音が聞こえるのにひどく静かに感じる。

寝過ごしていないだろうかと時計を確認すると、座席に座ってから五分しか経っていなかった。

目を閉じると先ほどの続きが見れそうだ。でも今度こそ寝過ごしてしまいそうで時計に視線を落としたまま目を閉じる気にはなれなかった。

夢の中の私はあの後どうするつもりだったのだろう。真っ白な世界で消えゆく背中をただじっと見つめて、ひとりぽつんと取り残されてしまうのだろうか。

ときどき大きく揺れる車内。降車駅の名前が放送されて席を立ち人の間を抜けながらホームに降り立って改札口へ歩き出す。
先ほどの悪夢を早く忘れるために彼の元へと走った。正夢ではないと必死に言い聞かせながら。




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