どこへ埋めればよかったんだっけ。
オーダーメイドのはずの黒いスーツは背筋を伸ばしていないとすこし窮屈に感じて、手に巻いた数珠は握るたびに指をきつく締め付け返してはきしきしと骨か数珠玉だかを軋ませた。
慣れない正座も、時間が経てば慣れた。
火葬したら小さな彼女はさらに小さくなって、最初入りきらないんじゃないかと思っていた骨壺にも十分な余裕を残して収まってしまった。
どこに埋めるのか、と聞かれたから、どこにも、と答えたら訝しい表情をされて、埋葬するのはゆっくりと眠ることだと諭された。
そんなの、知っている。
言われなくたって、わかってる。
「じゃあ、」
僕の家が石造りだから、そこに。
ただ、どうしようもないんだ。
すこしでも傍にいたいからなのか、寂しいからなのか。いいや、きっと夢をみていたからだ、彼女と暮らす将来を。
だから彼女と同棲していたわけではないけど、家に帰ったらきっと薄暗く広く寒く感じるのだろう。
乱雑にまとめていた写真から彼女の写真だけを取り出してベッドに潜るんだろう。それでもいつまでもベッドは冷たく感じて結局眠れなくて朝は毒で濡れた枕とシーツを洗う。
そんな日々が続く?ずっと?
「冗談だろ?」
いつか眠れる日がくるさ、彼女を思って濡れる頬もなくなる。
「…しねば、」
「ココ。君が悲しむぞ」
「何言ってるんだトリコ」
彼女はもういないんだ。
悲しめもしないんだ。
怒りもしないんだ。
笑えもしないんだ。
僕に愛してると囁かないんだ。
「トリコ、彼女は死んでしまったんだ」
もうどこにも行かないで、とどこにもいない彼女に歎いた。