付き合ってもう何年目となる恋人がいる。最近は喧嘩もしない。惰性的な関係。

「結婚しましょう、」

付き合ってもう何年目だろうか。僕だって三十を目前としてる。いつ結婚したって可笑しくない僕らなんだろうけど。

傍にいて支え合っていきたいからとか、愛し愛されてるからではなく、こんな、ずるずるとした、ほつれた糸を引っ張り続けているような、そんなふうに決めていいのだろうか。
いや、確かに僕は君を愛しているのだけど。愛しているはずだ、と言ったほうがしっくりきてしまいそうな今。

「あのね、私、昇格したの」
ココが占いで稼ぐお金にはほど遠い収入かもしれないけど。

開封済みの給与明細を彼女はテーブルに置いた。流れるように中を見ると確かに女性にしては中々の金額だった。
残業時間も中々。

「ちょっと待って。」
「何?」
「僕が養ってもらうの?」
「…だってそうしたら、私が定時で、ううん、その日のうちに帰れたら会えるもの。二人で、」

寝れるもの、と言った君の声はか細かった。
現金だろうか、途端にとても愛しく思えて、僕ばかりがずるずると不誠実に君と付き合っていたのが恥ずかしくて。

「…ごめん、」

なんて幸せものなんだろうか。

「…そ、う、美食屋も、再開したばかり…だものね、」
「ああ、いや、違うんだ、そういう意味じゃなくて、」
結婚したら君は家にいて。

君が女性だからではなく、僕が君の帰りをただじっと待っているのは遣る瀬なくて、帰ったときに君がいないのは辛いから、そんな情けない理由なんだけど。








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