だってこの気持ちは私にとって自然で当然で必然だから、誰に遠慮するつもりもないし、誰の為に遠慮するものでもない。

「何で。」
「…っだから、」

ココはどうして分かってくれないのかと、苦渋に満ちた顔でまた同じことを言う。
この言い争いは何度目だろうか。私たちの喧嘩の種はいつもこれだ。

「君が、辛い目に合う。」
「お得意の占いでそうでたの?」
「ああ」

周りに黙って交際していれば私が辛い目に合わないっていうけど。
付き合うって周りの目を伺わなきゃいけないの、黙ってるのは私が貴方に不釣り合いだと寧ろ公言しているように思える。

「私は例えば貴方とのデートの待ち合わせへ向かう途中石を投げられたっていいわ、家へ帰ったとき無情な手紙でポストがいっぱいになっていてもいいわ。」
カーテンは閉めきっていて、日中だというのに薄暗いリビングより、ずっと。

デートはいつだって薄暗いこの部屋で。恋人がいるのを悟られないようにプレゼントも買わない。有名人って大変ね。

そんなふうに隠さなきゃいけない私ってなんなの。

「別れよう」
「嫌だ」

だって付き合ってるって言わないわ。
私はそう思う。
皆に自慢して連れて歩きたいわけでも、プレゼントが欲しいわけでもない。けれど貴方の恋人だって証明が今はあまりにも乏しい。

「…ココ、」
私が好きなら私の我が儘どれかひとつぐらい聞いて?

この台詞にココへの愛はあっただろうか、と一瞬だけ疑問に思ったとき、テーブルを挟んで彼が力強く抱きしめてくれた。
そして耳元で私の我が儘ひとつを叶えてくれる。

私のどの我が儘もお互い傷付かなきゃいけないのに、それでも彼は痛いぐらい抱きしめてくれながら叶えてくれたから、ありがとうとだけ返した。










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