目の前で、大きな瞳から今にも涙が零れそうになっている。
潤んだ目で見つめられて、俺の手が勝手に伸びる。

(っやべ、条件反射だな、これは……)

慌て軌道を変えた手で小さな頭を撫でると、不安そうな表情でみのりが俺を見上げてくる。

「まだ、怒ってる?」
「いや……、元はと言えば、勘違いしていた俺が悪いんだ」

みのりは、自分が嘘をついてしまった事を謝りに来ていた。
だが、あの時みのりをそうさせてしまったのは、俺が勘違いしていた所為でもある。稔をちゃんと見て、きちんと会話をしていれば、思い込みで勘違いなどせず、こんな事にはならなかった。

はっきり稔から関係を解消されてしまったが、始まりからして全てやり方を間違えていたのだから仕方がないだろう。
稔が離れて物凄く落ち込んだ。だが、関係があった時、確かに稔からの好意を感じていた。稔が情の深い男だと分かっている。だから、再び稔を振り向かせる自信はあった。
あの余計なアホが邪魔しなけりゃな。

「篤志君、もうぎゅってしてくれないの?」
「ん? ああ。もうそれは、一人だけにするって決めたんだ」
「そ、そんな、なんで!?」

ポロポロと涙を流すみのりに、息が詰まる。
いやだがしかし! ここで甘い顔をしたら駄目だ!!

そろそろ俺もみのり離れをしなきゃならない。いつまでも甘やかしていたら、みのりの為にはならないだろう。
俺は、心を鬼にしてみのりと向き合った。

「いいか、みのり。もう高校生になったんだし、いつまでもベタベタしてはいられないだろう」
「なんで急にそんな事言うの?」
「みのりに嘘を付かせてしまったからだ」
「っ、篤志君」
「俺ばかりに拘るのがいけないんだろうな。みのりには、同学年の友人が必要だろう」
「お友達なら、一成君がいるよ」
「いや、あれは……」

俺がみのりを守るために頼んだ奴だ。
こんなに可愛いみのりは、ここでは変態野郎共に即手籠めにされてしまうからな。

「とにかく、信頼できる友人を作って、視野を広げておくのは、みのり自身の為になるんだ」
「……僕はもう邪魔なの?」

小さく呟いたみのりは、泣きすぎて、頬も鼻の頭も赤くして可愛かった。
だが、俺はこの可愛いみのりではなく、稔を抱きしめたい。過去に戻れるなら、泣いていたという稔を俺の両腕に収めたかった。

「そんな訳ないだろう。俺にとってみのりはいつまでも可愛い弟だ。ただ、お互いに好きなやつが出来たら、そいつを大切にしたいと思うだろ?」
「好きな人なんて……、わかんないよ」
「みのりも色んなやつらと関わっていけば、いずれわかるよ」
「……篤志君なんか……、篤志君なんか、もうキライ!」
「うっ、み、みのり……!」

みのりは泣きながら駆け出し、生徒会室から出て行ってしまった。
最後の言葉に物凄いダメージを食らったが、俺は涙を飲んで書類と向き合った。

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