僕達が出て行った後。
委員長と遠山先輩が、二人きりになっている風紀室のドアを眺めた。

「後は委員長に頑張ってもらわないと」
「副委員長、委員長は遠山先輩と付き合うんでしょうか」
「どうかな。それも含めてあいつの頑張り次第だな」

委員長はあんなんだけど、格好良いし、本当に優しい。
そんな人に好きだと言われて、好きにならないはずがない。

僕が、以前襲われていた時に助けてくれたのは委員長だった。
同じ男なのに、男に襲われて恐がっていた自分が情けなかった。けれど、あの緩い雰囲気と委員長の優しさに僕は救われた。

本当は、委員長を常にフォローする副委員長に憧れて、僕も同じように委員長の力になりたいと思っていたんだ。
委員長は女性が好きだから、せめて役に立って側にいたかった。

「大丈夫。委員長は恋人が出来ても、俺達を蔑ろにするような奴じゃないから」
「ふ、副委員長……」

上司の事だけじゃなく、部下の事まで気に掛けてくれている。やっぱり、副委員長はさすがです。


◇◇◇


周りに花が飛んでるんじゃないかと言うくらい、委員長は幸せそうだった。

「デートに誘ってみようと思うんだけどさ、星の見える丘と、夢の国、どっちがいいかな?」
「男同士でそんな場所ですか!?」
「遠山が却下するに百マンゴー」
「遠山先輩が話をそらすに五十マンゴー」
「えーっ」

ぶう、と委員長が唇を尖らせるが、可愛くない。

「委員長ってロマンチストですね」
「恋に恋してるんだろうな。告白したのは、薔薇の見える公園のベンチだってさ」
「ミノルくんに告白するには最高の場所だったよ」

ミノルくん綺麗だったなーと、委員長は幸せそうに遠くを見つめている。

「で、でも、男同士ですよね?」
「夢見るお年頃なんじゃないの? 初エッチの場所は、夜景の綺麗なホテルだったりして」
「お、良くわかったな! スペシャルスイートを年契約したんだ」
「気が早い! まだ付き合ってもいないんだよな!? アンタ、手ェ出す気満々なのかよ!?」
「副委員長、敬語が……」
「目標に向かって頑張るためには必要だと思ってさ。大切にしたいからこそ、シチュエーションも大事にしないと。それに、俺、同性って初めてだし……」

急にモジモジし始めたが、やっぱり委員長、可愛くないです。

ちょっと引き気味な雰囲気の中、いつの間にか風紀室には遠山先輩の存在があった。
パァっと表情を明るくさせた委員長の隣に、寄り添うように遠山先輩が立つ。

「飛鷹」
「ミ、ミノルくん。どうしたのかな?」
「あんたに足りないもの、俺が手取り足取り教えてやろうか……? 色々と」

そう囁くように告げた遠山先輩の色っぽさは、半端無かった。
顔を赤くして、見事に固まってしまった委員長に、遠山先輩は更に続ける。

「飛鷹、先ずはこのミミズの這ったような字を何とかしないとな。それから文章にやる気と誠意が感じられない。この書類、全部やり直し!」
「す、すみません!」
「それから、俺の体目当てじゃないんなら、今すぐホテルの契約を取り消せ! そういったものはな、お互いが思い合っていれば、場所なんか関係ないんだ」
「う、うん! わかった!」

書類を委員長に押しつけた遠山先輩は、言うだけ言って颯爽と去って行った。

遠山先輩を見送る委員長は、本当に嬉しそうで、僕はそんな委員長を近くで見守る事が出来て、とても幸せだと思った。


end.

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