「ミノルくん見なかった?」

焦ったように言う飛鷹先輩を見ながら、俺の背中に冷たい汗が伝った。


『一成はみのりちゃんと移動だよな?』

ヒロに確認するように言われて、適当に返事をして奴らと別れた。その後、奴らを見ていない。
そして、遠山先輩と連絡がつかないと焦る飛鷹先輩。
……はあ!? マジかよ!!

「僕は見なかったよ、琉生君」
「そっか、見かけたら連絡くれ」
「あの!」

急いで走り出そうとした飛鷹先輩を呼び止めた。

「なに?」

苛立たしそうに俺を見る先輩に臆しながらも、俺は頑張って口を開く。

「もしかしたら、分かるかも……っす」

その時の鬼気迫る飛鷹先輩は、篤志さん並に恐ろしかった。
遠山先輩の行方を知ってるって事は、どう考えてもクロに近いって事だから、下手すりゃ殺られてたかもしれなかった。みのりが一緒にいて助かった、マジで。


単純なあいつらが考えそうな事は、だいたい分かる。

「ほんとーっに、ミノルくんがいるんだろうな、ああ?」
「はい……」
「早くしろよ、ミノルくんがケガでもしてたら、お前責任取れよな」
「ええっ」
「琉生君、横暴だよそれ」
「いや、あの、遠山先輩は大丈夫だと……」
「はあ? あんなにエロいミノルくんだよ? 絶対に血迷った奴らの仕業に決まってんじゃん。てか、俺と連絡取れない時点でアウトだからね。全然大丈夫じゃないからね」

先輩のマイルールうぜぇ……。
だが、そんな気持ちはおくびにも出さずに、興奮する飛鷹先輩を連れて先に進んだ。

「ひっ!!」

小さく悲鳴を上げたのはみのりだ。
そこには死屍累々の惨劇が広がり、みのりの顔色はたちまち悪くなる。

「ミノルくん!」

そんな中、一人平然と立つ遠山先輩に飛鷹先輩が駆け寄った。

「ミノルくん、無事で良かった!!」

飛鷹先輩を見て、「やべっ」と言って顔を顰めたのはスルーしたらしい。飛鷹先輩は、力強く遠山先輩を抱きしめる。

「苦しい」
「何もされてない? イヤな事されてたら俺がお説教するから、本当の事言ってね」
「その必要はないだろ」
「篤志さん……」

篤志さんも駆け付けて来たようだ。
呻きながら床に転がるマサキ達を見ながら、篤志さんが溜め息をつく。

「稔から離れろ」
「イヤだ!」

飛鷹先輩がじっとりした目で篤志さんを睨む。

「お前、風紀の仕事しろよ」

これどーすんだ、と、篤志さんが転がっているヒロを蹴った。

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