結局悠真の真意はわからないまま、拓海たちを乗せた車は目的地に到着した。連れられた場所は、大通りから外れた住宅街にひっそりと構えている、白壁のお屋敷だった。

「……ここは?」
「時々利用している、創作フレンチの店だ」
「フレンチ……。無理です!」
「大丈夫」

ためらった拓海が振り返ると、国産高級車は音もなくどこかに行ってしまった後だった。
立ち尽くす拓海を、悠真が肩を抱くようにしながら、白壁の門の中へと押し込んだ。

「中瀬様、お待ちしておりました」

玄関に待ち構えるようにして立っていたのは、シンプルなスーツ姿の青年だった。
悠真のコートを受け取った青年は、拓海を見て微笑む。
カチカチに固まっていた拓海は、自分のコートを待っているのだと思い至って、脱いだコートを手渡した。

お屋敷の中は、和風の中に洋風をミックスさせたような、とてもお洒落な雰囲気になっている。靴のまま入り、長い廊下を案内された。
青年に促された場所に入ると、そこは六畳程の部屋だった。テラコッタの床にテーブルと椅子が置かれていて、クリスマスの装飾も派手すぎない程度に飾られている。暖色系の照明とろうそくの仄かな明かりで、落ち着いて過ごせるような雰囲気だった。

「苦手なものはあるか?」
「な、何でもたべられます」

向かい合って椅子に座ると、辺りを見回していた拓海に悠真が尋ねてくる。拓海が答えると、悠真は青年に頷いた。

「アベリティフはノンアルコールで。後はペリエでいい」
「かしこまりました。ごゆっくりお過ごしください」

青年がいなくなると、拓海は急に値段の事が気になりだした。絶対にそれなりの金額がかかるに違いない。

「個室だし、箸で食べるような料理だから、好きなように食べればいい」
「あっ、はい」
「それに、今日はタダ飯だから好きなだけ食べろよ」
「えっ、タダ!?」

拓海の反応に、悠真はくすりと笑った。
どうやら悠真の実家が融資をしている店で、その関係で今日はこの店に招待されていたらしい。
拓海にはよくわからない世界の話だけど、取り敢えずお金の心配は無くなったので安心した。

しばらくして運ばれて来た料理は、拓海には勿体ないくらいにキラキラしたものばかりだった。
コースだから、少しずつ順番に出てくるので、その都度給仕をするスーツの青年が説明してくれる。それでもわからないのは、物知りな悠真に食べながら説明してもらった。

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