「えー、俺は無理! これからは俺に一切関わるなよ」

水島さんに和葉先輩を守りたいと話したら、開口一番にそう言われた。
その後「お前、単純だもんな」と哀れんだように言われたような気がするが、些かショックだった俺はあまり聞こえていなかった。

だが、水島さんならそう言うのも当然だ。
水島さんは孤高の人だから。ただし学園に限るけど。外に出れば、水島さんはおっぱ、じゃなくて、女を選り取り見取りだ。
……羨ましいだなんて全く思ってない。なぜなら俺は硬派だからだ。

だが、入学して間もなく、俺は綺麗な男と一緒にいる水島さんを見かけた。水島さんは誰ともつるまないはずなのに、どうしてなのか疑問だった。
常磐の腹黒野郎が何か知ってるかもしれないと思い、奴にに詰め寄ると、一緒にいたのはあの男の護衛のためらしい。

そんなこと、俺は納得出来ない。なぜ和葉さんは駄目で、藤沢とかいう男はいいんだ。
腹黒野郎に言われたからって、水島さんは大人しく従うような人じゃない。だったら、水島さんは藤沢って奴に騙されているのかもしれない。
あんな弱そうな男が、水島さんに守ってもらおうだなんて、身の程知らずもいいところだ。
俺は和葉さんに会いにも行かず、溜まった鬱憤を空手部に籠もって晴らした。

そうして俺が空手に打ち込んでいる間に、水島さんは風紀に捕まってしまった。
あの、おっぱ……、女にしか興味のない水島さんが、男を手ごめにするなんてあるはずない。
真っ先に風紀に殴り込みに行こうとしたが、腹黒野郎に止められてしまった。

「水島はまあ大丈夫だから。それより、水島の代わりに藤沢君を守ってくれないかな。君が気にくわないと言っていた彼の本質を見抜くチャンスじゃないのか?」

そうだ。例え納得出来なくても、水島さんの意志を引き継ぐのは俺だ。それに、藤沢の本性が分かれば、水島さんの目を醒ますことが出来るかもしれねえ。
俺は藤沢の傍に行くことにしたが、断じて腹黒野郎に丸め込まれたわけじゃない。

「お前藤沢だろ」

休みにも関わらず、校舎をフラフラ出歩く藤沢を呼び止めると、奴は俺を見て首をかしげた。
そ、そんな仕草が似合うからって、俺はお前なんかに騙されないからな!

寮に連れ戻そうかと思ったが、奴は風紀室に行くと言いやがった。水島さんに会いに行くつもりなのか知らないが、俺も風紀には殴り込みをかけたかったんで、一緒に行くことにする。

途中で和葉さんに出会い、元気そうな姿を見て安心した。
和葉さんに縋りつかれる会長をぶっ飛ばしたいと思ったのは気のせいだろう。今は藤沢の本性を見抜くのが先決だからな。

藤沢が風紀で何をするのかと思えば、殴り込みみたいなもんだった。
水島さんのために、あの風紀委員長に必死にくってかかる奴を見て、俺は藤沢に対する考えを改めないといけないんじゃないかと思った。藤沢は、水島さんや俺にまとわりついてくる男女とは違う。

立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
風紀室から出て、改めて藤沢を見て頭に浮かんだのは、そんな言葉だった。
俺は頭を振ってそんな考えを切り捨てる。それは女に対する言葉で、藤沢はどっから見ても男だ。
……俺はこの学園に染まってきたのだろうか。藤沢を寮に押し込んだら、十二時間耐久空手にストイックに勤み、邪念を振り払おう。

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