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「俺を殺すつもりなのか?」

奏斗が構え直した銃を俺へと向けていた。
俺を殺してまで、どうしてそんなに欲しがっているんだろうか。

俺だって、少なくともあんなことがあるまでは、奏斗に助けられていたのは事実だし、奏斗の事を大切に思っていた。
暗くなる気持ちを振り切って、スタンガンを握り締める。スタンガンと拳銃じゃ、結果は目に見えてるんだけど。
それでも、奏斗の人差し指が動いてトリガーにかけられた時、俺は身体ごと飛びかかっていった。


銃声はしなかった。
スタンガンを押しつけたせいで漏れた奏斗の苦しげな呻き声と、ドサリと倒れ込んだ大きな音しか聞こえなかった。

倒れた衝撃はあったものの俺は無事だった。俺もろとも仰向けに倒れた奏斗は、気を失ったのかぴくりとも動かない。
奏斗が持っていた拳銃は吹っ飛んでいて、左腕が支えるように俺の腰に回っていた。

「何で……」
「はじめから撃つ気はなかったのかもな」

突然、聞き覚えのある甘い声がした。
自宅に続く方のドアから姿を現したのは、拳銃を構えている奈波さんだった。
奈波さんは、拳銃をホルダーにしまいながら、俺たちの方へ歩いて向かってくる。

ちゃんと立って動いてる。
生きてたんだ。

奈波さんはむっとした表情で、俺の腰から奏斗の腕をはずして、ついでに奏斗の脈もとっていた。

「奈波さんを殺したって聞いたのに」
「ああ。黄泉路の途中で引き返してきたぜ。見てみろよ」

指し示す所を見てみれば、奈波さんが着ているベストのちょうど心臓の辺りに、銃痕みたいな丸い穴が見事に開いていた。

「滅茶苦茶致命的な所が、大変なことになってるんだけど」
「高性能防弾チョッキのテスト中で良かったぜ。頭を狙わなかった、こいつ素人か? まぁとにかく、銃刀法違反と俺への殺人未遂で逮捕な」

にやりと意地の悪い笑みを浮かべて、手錠を取り出した奈波さんは、奏斗の腕にカチャリと音を立てて手錠を掛けた。

「えぇぇっ?」
「ああ?」
「あんた何やってんの。ソレって何プレイ?」
「ちげーよ、正真正銘の手錠だ。どうせプレイすんならお前に手錠かけるっつうの」

奈波さん、警察の人間だったんだ、変態なのに。
手錠を手早く紐で固定して奏斗の動きを封じると、奈波さんは携帯を取り出して手短に誰かに連絡していた。
その姿はずいぶん手慣れていて、テレビで見るような敏腕刑事さながらだった。

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