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暖かくて、ふわふわしたいい気分だった。
俺の意識は、昔飼っていた、大きな黒い犬と遊んでいたころに戻っていた。

楽しくて、嬉しくて、その犬と遊んでいる時は、いつだってケラケラ笑っていた気がする。
やんちゃで、身体ごとじゃれつかれると支えきれなくて、一緒になってひっくり返っていた。
そんな時、俺を助け出してくれたのは、いつだって大きくて優しい手だった。
犬と遊んでいる時は、必ずその人が傍にいた気がする。

いつだったか、俺が厭な感じの男に絡まれていると、その人が追い払って助けてくれた事があった。
近所の公園で、いつまで待ってもその人が来なくて、不安でだんだん悲しくなってきて。
そこに男が近づいて来て、俺の腕を掴んでどこかに連れて行こうとした。
そんな時に、駆け付けて来たその人が助けてくれた。
ショックで固まってしまった俺を、その人は宥めるように抱き締めながら、何か語りかけてくれていた。

どうして俺は、あの時その人を待っていたんだっけ。
……そうだ、俺はいつもその人と黒い犬が来るのを公園で待っていた。
あの黒いドーベルマンは俺が飼っていたんじゃない、その人が飼っていた犬だったんだ。

姉さんの肺が弱かったからペットが飼えなくて、公園で散歩していたその犬と、いつも遊んでいた。
犬だけじゃない、俺は飼い主のその人の事も大好きだった。
ちょっと意地悪だけど、格好良くてすごく凛々しい人だった。
飼っている犬に似ていて、黒くて印象的な瞳を持った……。

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[mokuji]

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テーマ「人外ファンタジー」
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