12「濡れてきたな」
先端を撫でられて、ひくりと震えるのがわかった。
けれど、やっぱり触るのはほんの一瞬で、すぐに離れて行ってしまう。
太ももを撫でられ、もう力の入らなくなった足を開かされた。
奥に触れられる。いつの間にか指に何かをつけていたらしく、ぬめった指がつぷりと入って行く。その感触に、体が強張った。
「んんっ」
不意に、太股に充実した奈波さんのものが当たる。今から、これで貫かれてしまうのだ。
固まった俺の耳元に唇をよせて、奈波さんは囁いた。
「力を抜かないと、よくならねえぞ」
「ん、っ」
そのまま耳朶をくすぐられ、力が抜けた所に中へ長い指が入ってくる。
ゆっくりと侵入を果たした指が、さっそく動き始めた。
徐々に抜き差しを速めながら、時折かき回すように動かされて、掴まれていた足ががくがくと揺れる。
乳首も口にくわえられて、今度はそこに歯を立てて刺激された。
「んんっ…、あ、ああっ」
口を押さえていた手を離して、奈波さんのシャツを握り締めたから、喘ぎ声があふれだす。恥ずかしくて余計に体が昂ぶっていく。
中を弄る指も増やされて、ぐちぐち音を立てて刺激を受ける。
その度に、先走りの汁がぱたぱたと腹の上に滴れて、その感触にでさえも感じてしまった。
「あ…、も、やだ……、あぁっ」
早く熱を解放したかった。そうでないと、ぐずぐずに溶けて無くなってしまいそうだ。
けれど、奈波さんは更に指を増やして中を抉ってくる。
「っあ、も…むり……っ」
「なあ、何があったんだ。男漁りしたくなるようなことがあったんじゃないのか?」
「くぅぅ、あっ……やだ」
弱い所を三本の指で交互に刺激されて、射精感が込み上げるけど、スレスレの所で指が離れてしまった。
「…事故に、んっ…猫が…あっ」
「事故?」
中で意地悪く動いていた指が、不意に止まったので、俺は今日あった事をしゃべりだした。
「車にひかれて……。助けられなかった。もうちょっとで助かったかもしれないのに」
事故は嫌だ。
否応なしに気持ちが沈んで、心が締め付けられる。
流れる血を止めて、呼吸を続けさせてやりたかった。
どうしても助けたかった。
それに縋りたかったのかもしれない。
命を取り留めた所で、両親が還ってくるわけじゃないのは分かっているけど、それが切っ掛けになって、何かが変わるかもしれないと思っていた。
結局は、目の前で動かなくなっていくのに、どうする事も出来なくて、自分の無力を思い知るだけだった。
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