10ふと気が付くと、見知らぬベットに寝かされていた。
煙草の香りが漂っていたから、奈波さんの家か何かだろう。
体を起こして辺りを見回すと、備え付けの家具類の他には何も見当たらない。殺風景な部屋だった。
短期賃貸型のマンションだろうか。
何でこんな所に。奈波さんならもっとバカ高そうな、超高級マンションとかに住んでそうなのにな。
あくまでもイメージなんだけど。
「目が覚めたのか」
奈波さんがドアを開けて入ってきた。
いつもの黒っぽいスーツの上着を脱いで、ネクタイも外してラフな格好になってるから、やっぱりここは奈波さんの住み家なのかもしれない。
額に手を当てられて、顔を覗き込まれながら様子をみられる。
渡されたミネラルウォーターが冷たくて美味かったから、遠慮なく一気に飲み干した。
「何があったんだ? 薬物を飲まされてたわけでもないんだろ」
「違う。あんたが強引だったから」
空になったボトルを突き返す。奈波さんはそれを脇に放ると、俺の両肩を押してベットの上へと転がしてくる。
「世話んなっといて、よくそんな事言えるな」
「頼んでないし。原因はあんただし」
乗り掛かられて、ぐっと顔が近付いた。
煙草の香りと共に、キスが落とされる。
「……平気なのか。さっきのは、何が駄目だったんた?」
質問には答えないで、俺はそっぽを向いた。
押し倒された状態で、そんな事をしても無駄なんだろうけど。
案の定あごを掴まれて、またキスされた。今度はすぐには離れず、唇を捲り上げられ、侵入を拒んで閉じた歯列をなぞられる。
その間、奈波さんの手が服の上から体を這い回り、乳首の辺りで何度も指を押しつけられた。
「ん……っ」
甘ったるい声が出てしまった。
触られて、俺の乳首が固く凝っていくのがわかる。
ねだるように立ち上がったそこを奈波さんの指先で何度も押し潰された。
刺激に弱い俺は、たまらなくなって口を開く。すぐさま舌が侵入してきて中を荒らされた。
乾いていた所が、急速に潤っていくような感覚に酩酊する。
煙草独特の苦味が口中に広がって、それさえも今の俺には気持ちのいいものに感じていた。
「随分と敏感じゃねえか。そんなに男が欲しかったのか?」
口付けを感受し始めた俺から一旦離れると、奈波さんは咎めるような口調で言った。
違う、……いや、そうだ。
人肌が恋しかった。
ただ、嫌なことを忘れたかったんだ、俺は。
こうやって忘れる方法しか知らないから。
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