時々、会社の出来事を流してもらっていた。
そうまでしてでも、俺は情報が欲しかった。

「いなくなったって、辞めたってこと?」
「違うみたいですよ。転任ですが、栄転のような扱いですね」
「どうして?」
「詳しい事はまだ……」

あの秘書が、兄の元から去った。兄が手放したんだ。
何度となく見せ付けられた二人の関係に、兄はあっさりと終止符を打ってしまった。

そのうち自分も兄からの執着が消える日が来るのかもしれない。
その時はきっと、何もかもが壊された時だ。

「貴方の入社も近い。また動きがあるかもしれません。気を付けてくださいね」

自分の事など、どうとも思わない。兄とのこれから先の事が気懸かりだった。

これからも俺は兄に抱かれる。体は何度繋がっても、決して心は繋がらない。
俺は、我儘で自分勝手な人間だ。
あの視線だけでは、満足出来なくなっていた。

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