11

兄は完璧な人だった。
吸い寄せられるようにいつも目で追い掛けていた。
そうやって、完璧な兄を見ていたからそれが分かった。どこか満たされていない兄の姿を。
そんな兄から、さらに視線が逸らせなくなっていた。
それくらい、兄を見ていた。

「兄さん」

兄は俺を抱く。
毎日のように体を繋げた。
冷たい瞳が、次第に熱を帯びていくのが好きだった。

「今日はどこへ行っていた?」
「本屋に。参考書が欲しくて」

見ているのは、俺だけじゃない。
兄が俺を見ていた。
ひんやりした視線が絡み付いてくる。

俺が兄を見ていたのは、これが欲しかったからなのかもしれない。
冷たい視線も熱を持った瞳も、全て自分のものにしたかった。
男同士なのに、兄弟なのに、自分がこの現状を受け入れているのは、それが理由なのだと気がついた。


でも、それでは空虚な兄を満たす事は出来ない。本当の願いは叶えられないとわかっている。
俺はただ兄を見ているだけだった。


end.

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