熱が出た時のように、頭がぼうっとして身体中が熱かった。
はだけられた胸元を大きな手が這い回る。

「うっ、ぁ……っ」
「ちくび、気持ちいいんだね。可愛いよ」

両方一度に摘まれた。指が動く度に、むず痒くなってくる。

「ぅんん……っ、やめて」
「こんなに感じちゃってるのに? 淫乱だから恥ずかしい?」
「違う……」
「違わないでしょ。ちくびだけでこんなになって。淫乱だよ、キミは」
「んぁぁっ、イヤだ……っ」

腕を掴んで引き剥がすことも出来ない。
痛いくらいに摘まれる。それなのに、女みたいに感じて声を上げて、本当に淫乱なんだ。
身体中触られて、オフィスで恥ずかしい声を上げていたあの秘書と重なった。
でも、俺の相手は違うひとだ。

「あぁっ、やぁっ、兄さん…っ」
「ん? 何、あいつがいいの?」
「兄さん、兄さん……」
「必死になって可愛いね」
「はぁ……っ、んぁっ、兄さん、」
「いくら呼んでも無理だよ。あいつはキミを放って、よそで宜しくやっちゃってんだから」

その台詞に胸が痛くなった。
兄が秘書と一緒にいて、またあんなふうに過ごすのだろうか。

その間にも彼の顔が胸元に落ち、ねっとりと舌で舐め上げられる。
辛いのに。それなのに、嬌声のような悲鳴が止まらなかった。

「ああっ、んッああ、やめて……」
「ホント素直じゃないね。体は気持ちいいって言ってるよ」

手がズボンに伸び、金具を外される。
そこが既に熱くなってしまっているのは分かっていた。けれど、そんな所まで好きにされるのは嫌だった。

「やだ、やめろ……っ、」
「だから、あいつに操立てる必要ないんだって。気楽に気持ち良くなっちゃえばいいのに」
「嫌だっ……兄さん!」

嘆息が聞こえる。相手の指が体から離れ、代わりに俺の目元へと伸びてきた。気付かないうちに泣いてしまっていたらしい。

「俺、こんなに嫌がられたの初めてだわ。俺いい男だよね? 自信なくしそうなんだけど」
「……」
「な、真面目な話あいつより俺の方がいいぞ。キミなら本気で欲しいくらいだし、考えてみなよ」

整った彼の顔が近づいてくる。
キスされる。そう思った時、ドアが開く音がした。
仕事へ向かったはずの兄が、そこに立っていた。

「終わりだ」
「マジかよっ。まったく……。可哀相になあ。嫌になったら、いつでも俺のところにおいで」

助けてやるから。
そんなふうに囁くと、彼はそのまま俺から離れていく。
入れ替わるように兄がすぐそばに来た。

去りぎわに言われた言葉は、聞かなかった事にした。
兄がいるのに、誰かに助けてもらう必要はない。

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