新しい弟は、何でも持っていた。
社会的立場のあるしっかりした父親。血の繋がった本当の母親は病で亡くしたらしいが、愛されていた事がよくわかる。
辛酸を嘗めるような経験など、した事もないのだろう。

「お休み」
「お休みなさい……」

具合の悪そうだった弟を労って、優しく声をかける。ベッドに横になった弟は、淡く微笑んで目を閉じた。
弟の柔らかい髪を掻き上げると、ぴくりと体を震わせる。
男を抱いていた兄に、身体中を撫で回されたなら、この弟は一体どんな反応をするだろうか。

一時、弟の帰宅が遅かった事があった。
本人は自習だと言っていたが、男子学生と二人きりで過ごしていたようだった。
甘やかされて来た分、危険に対する認識は甘い。周囲からどんなふうに見られているかなど、考える事もしないのだろう。
誰も自分を傷つけないと思っている。他人の手で汚される時になって、はじめてそれを知っても遅い。

触れた髪がふわりと揺れた。全てが柔らかそうに出来ている。
俺の手で触れたら、お前はどんなふうに汚れていくのだろう。
真っ直ぐに俺を見つめる瞳は、どんなふうに濁っていくのだろうか。

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