10

男から、焚き染められた香の、甘く濃厚な香りがした。

足を足で、腕を腕で押さえた男が全身で葉月を縫いとめていた。
身動きが取れず、葉月は歯を食い縛りながらきつく睨み上げる。見下ろしていた男が、そんな葉月に僅かに目を細めた。

「お前をぐちゃぐちゃにしてやりてぇな」

男がのしかかったまま、葉月の首に両指を絡めた。徐々に力が入り、首が絞まっていく。
引き剥がすために、葉月は自分の首を絞める男の腕に手をかけた。

「そう簡単には逃げられない。俺はあいつらとは違う。さあ、どうする?」
「ぅ……っ」
「どうせやるなら、徹底的にブッ壊してやらないとな」

あの時とは違って、今度は窒息させるつもりらしい。
葉月は男の腕にしがみつき、その手に力をこめた。爪で肉を抉る感触がして、男の腕から血が流れたのか、ぬるりと滑る。
けれど男の腕はびくともせずに、吸い付いたように離れなかった。

「ふ……」

頭が破裂しそうになった時、不意に片手が離た。僅かに呼吸ができるようになり、葉月は細く喘ぐように酸素を吸う。
その間に帯を解かれ、肌が露になった。

「千尋に触られて、感じたのか? 可愛く喘いでいたらしいじゃないか」

男が問うが、ぐらぐらと回る葉月の頭の中には入ってこない。
男の腕を掴んでいた葉月の手が、濡れ縁の上にぱたりと落ちた。
意識が遠退きかけた時、男のもう片方の手が、やっと首から離れた。
急に大量の酸素を吸い込んで、激しく咳き込むが、そんな葉月に構わず、男の手は肌の上を這う。

はぁはぁと大きく上下する胸に、男の指が絡んだ。
引っ掻くように執拗に弄られ、次第に熱を帯びはじめる。そこをきゅっと摘まれて、ひくりと身体が跳ねた。

「感じてるのか」

男が愉しげに笑った。
一度ならず二度までも、男相手にこんな目に合わされ、葉月は己の腑甲斐なさに嫌気がさす。

「ぁ……っ」

濡れた感触がした。
冷たい床に両手首を押さえ付けられ、男の舌が葉月の身体を這い回る。
そのまま胸の頂きを舌で転がされて、そこからむず痒く痺れたような感覚が広がった。

しかし、そんな甘い痺れに捕われたのは一瞬で、すぐにきつく歯をたてられる。歯で挟み込まれ、括りだされたそこを舌でねぶられ、先程よりも一段と熱を帯び始めた。

「あっ…、やめっ…あ…っ」

何とも言えない感覚に、身体が竦んだのを喉奥で笑われる。
弄んでいる上に、何も知らないガキだと馬鹿にされたと思い、葉月は不自由な身体を捩らせた。

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[mokuji]

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