「え、えーっと。奈波警視が発砲事件の指揮官を担当した時に、ドラッグ絡みでしたからマトリと連携を取ってたんです」

ぴくりと反応した上久保さんが、オレを見て先を促した。
よしっ、この話なら大丈夫そうだ。

「あの時は、着任早々の鬼のような恐ろしい目付きの上司に、みんながびびってたんですよね。マトリが潜入先でとちった時、まさに危機一髪で奈波警視が助けに入ったんです。そしたらマトリの奴ら、特に助けられた奴が、警視に惚れ込んじゃったみたいで。事件が解決するまで協力態勢を強化する事になったんですよ。元々麻薬取締官は厚生省で管轄も違うし、どっちが先に検挙出来るかでライバル意識が強かったんですけどね。警視のおかげでいい感じになって、常に情報交換とコミュニケーションが……」

さ、寒いっ!
さっきより確実に寒いよ。
ツ、ツンドラ? ここは永久凍土の地ですか!?
調子にのって一人で喋っている間に、上久保さんから何かがさっきよりいっぱい出てる気がするーっ。

「コミュニケーションって、一体どんなコミュニケーションを取ってたんだろうね……」

だ、だれか早く何とかしてくれぇぇぇっ! 永久凍土に埋められるっ。


……ピンポーン


そんな時、ナイスなタイミングで玄関のチャイムの音がした。
オレは救世主を迎えるべく、上久保さんの代わりに玄関まで急いだ。 

「……ああ? テメェこんな所でなにやってんだあ?」

しかし、安堵したのもつかの間。ドアを開けた途端、オレはメデューサに睨まれたかのように固まってしまっていた。
鬼上司が、世にも恐ろしい目付きでオレをぎろりと見下ろしていたのだった。

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