2料理は上手いし、綺麗だし、女の人だったらお嫁さんにしたいくらいなのに、いや、女の人じゃなくたって……。
はっ、オ、オ、オレはなんて不埒な事を〜っ!!
「なあ、地味スーツ」
「んぐぐぐッ」
いきなり呼ばれて、思わず煮っころがしの芋が喉に詰まりそうになった。
すかさずお茶を差し出されて、至れり尽くせりの幸せな状態に、やっぱり死期が迫っているんじゃないかと不安になる、オレは根っからの薄幸な人間だった。
「すみません、上久保さん。どうかしたんですか?」
「……まあ、大したことじゃないんだけど。奈波さんて仕事中はどんな感じなんだ?」
「奈波警視ですか?」
「だってなんか、刑事ってより若頭っぽいし、悪そうな感じだろ?」
「え……まさか、悪い事いたされちゃったんですか!?」
いやまさか、……でも奈波警視ならなんかあり得る気がする。
途端に真っ赤になった上久保さんが、ちがう!!って思いっきり否定したから、オレの早とちりみたいだ。
見た目は確かに怖いから、上久保さんの担当刑事としてはどうなのかと不安になったのかな?
そんな不安なら、オレが取り除いてあげますよ、上久保さん!
「そうですねぇ、同僚や部下に対しては凄く厳しくて、鬼上司と呼ばれてますけど、それもオレ達を思っての事なんですよね」
ふんふん、と頷きながら話を聞く上久保さんに、オレは嬉しくなって話を続けた。
「刑事のくせに先端恐怖症っていう致命的な奴がいたんですよ。警視は熱血漢な所があるみたいで、そいつに付きっきりで特訓してあげたんです。そいつ、はじめは嫌がっていたんですが、警視と四六時中一緒にいるうちに、すっかり警視に心酔しちゃって。警視が傍にいないと駄目だー、なんて言いだす始末……」
急に感じたひやりと冷たい空気に、ぶるっと体が震えた。
あれ……ど、どこかでブリザードでも?
「……どんな特訓、したんだろうねえ」
か、上久保さん?
ふっと目を細めた上久保さんからは、何か恐ろしいものが出ているように見えるんですがっ!?
……そうか、刑事が先端恐怖症なんて情けない話じゃなくて、もっと奈波警視が活躍した話がいいのかな。
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