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「会議中に済まない。どうしても言いたい事があったんだ」
「それなら後にしていただけますか? 今のあなたは部外者です」

森崎が淡々とした声で、江利川に退出を促した。
松平が森崎を忌々しげに睨むが、江利川は穏やかな表情のまま頷いている。

「わかった。けどせっかく会長に許可をもらったから、少しだけいいか? 俺は二度とこの学園に来るつもりはなかった。でも、友達のために頑張ってる拓海君を見てたら、応援したくなったんだ。それに、俺の無実を信じて頑張ってくれていた奴らに一言くらいお礼を言いたくなってしまって。それは後でみんなに直接言うから」
「っ、江利川先輩……!」

松平が、感極まったように江利川の名前を呼ぶ。そんな松平に江利川が苦笑いした後、和葉の後ろにいた生徒を見て彼に声をかけた。

「皐月君?」
「え、江利川先輩……」
「江利川さん、早く退出を」

江利川は何か言いたげにしていたが、再度森崎に言われて、ドアに向かおうとした。その時、皐月と呼ばれた生徒が口を開いた。

「え、江利川先輩! ごめんなさい!!」
「ちょっ、皐月!?」

隣にいた生徒が慌てて止めようとするが、皐月は言葉を止めることはなかった。

「ごめんなさいっ、俺、江利川先輩が犯人にされて悔しかったのに、同じことしてる……っ」
「皐月駄目だよ!」
「どういうことだ?」

河峰が、厳しい眼差しで皐月に尋ねた。

「嘘だったんですっ。襲われたって言ってたのは、違うんです」
「さ、皐月、何で」
「ごめん。でも、もう駄目だよ。水島君達に、江利川先輩みたいな辛い思いをさせることは出来ない。ごめんね、冬樹」
「皐月……」
「皐月君、本当のことを話してくれて嬉しいよ」
「江利川先輩……」

江利川が微笑むと、皐月はポロリと涙を零した。

「でも、どうしてそんなことをしたんだ?」
「俺と、……冬樹は付き合っています。でも、冬樹にはファンの人達が多いから、まわりには絶対に秘密にしていたんです。それがいつの間にかバレてしまったみたいで、俺達を脅すような手紙が届きました。差出人は誰かは分からないけど、篠宮君と水島君を犯人に仕立てるようにしろと書かれていて」

河峰が眉間に皺を寄せながら腕を組み、松平は額に手を当てながら首を振った。

「今までのことは狂言だったと言うことか。理由はどうであれ、君達が騒ぎを起こしたことには変わりない」

無表情の悠真がそう告げると、皐月と冬樹はうなだれてしまった。

水島達を巻き込んだ二人は許せないが、そうしなければならなかった背景を考えれば、彼らだけを責められない。
それに、こういった場で、あえて手厳しくしなければならない立場にいる悠真のことを考えてしまう。

「た、たしかに」

だから、思わず言葉を出してしまい、そんな拓海に会議室のみんなの注目が集まってしまった。

「……た、たしかに、何の罪もない水島君達を犯人にしたのは許せませんが、そうやって脅した人も処罰の対象になるんですよね」
「そうだな。二人を処罰するとしても、当然脅した人物も処罰しないとならないな」
「ええっ!? 誰か分からないって言ってんだぜ。どうすんだよ。しかも、それこそこの二人の嘘だったらどうすんだ?」

噛み付いた松平に、悠真は涼しげな顔で告げた。

「そこは風紀の腕の見せどころだろう」
「げっ、ふざけんなよ」
「仕方ない。水島と篠宮は今まで済まなかった。すぐに解放しよう。そして、二人を脅した犯人を見付け出すよう努力する」
「マジっすか、河峰さん!」
「ああ。その二人には詳しく話を聞かなければならないな。水島達も、また話を聞きたい。どうして巻き込まれることになったのか、理由がわかればいいんだが」
「それはいいけど。でも、もう帰っていいですよね」
「ああ。今日は寮で休んでくれ」
「あの、ちょっと待って!」

水島達の疑いが晴れ、ようやく話がまとまりかけたそのタイミングで、和葉が大きな声を上げた。

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