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半分覚醒した拓海が目を開くと、目の前には眠る悠真の輝かんばかりに綺麗な顔があった。驚いて一気に目が覚め、出しそうになった声を飲み込む。
なぜこんな所に悠真が、と思って、昨日成り行きで一緒に眠ってしまったのを思い出した。

眠っていても、イケメンはイケメンだ。
外が薄ら明るくなってきているのが、カーテン越しにもわかる。少し明るくなった部屋で、拓海は目の前にある悠真の寝顔に見入ってしまう。
それから、昨夜ベッドの上であったことを思い出して、身悶えしたくなるほどの羞恥が襲ってきた。

そんな時に、悠真の目蓋がパッチリ開いて、黒い目と視線が合った。

「わっ!」
「朝から忙しいな」
「おっ、起きてたんですか?」
「ん、まあな」

そう言って悠真は体を起こすと、拓海の髪をくしゃりと撫でてからベッドから降りる。
無くなった温もりに寂しさを覚えて、そんな自分に頭を振りながら、拓海もベッドから降りた。

「午後、水島と篠宮の処分が決まる」
「……はい」

結局、拓海はまだ何も出来ていない。
処分が決まるまでに、何か出来ることはあるのだろうか。

「そんな悲壮な顔をするな。拓海、二人を助けたかったら、風紀とのカンファレンスに参加するんだ。そこで処分の最終決定がされる」
「えっ、俺が行ってもいいんですか?」
「俺が許可する。二人は無実なんだろう?」
「はい」
「拓海が来れば、きっと二人を助けられる」
「わかりました、行きます」

拓海が行くだけで、二人が処分を受けずに済むならどんな場所でも行くつもりだ。
でも、何の権限もない拓海が参加して、それだけでどうして二人が助かるのかが不思議だった。

「拓海が二人のためにやってきた事は無駄じゃない。それが助ける切っ掛けを作ったんだ」
「……はい。先輩、ありがとうございます」

悠真は頷くと、再び拓海の髪を撫でた。


◇◇◇


朝食を食べてから、悠真は一足早く学園へ帰ってしまったため、拓海は用意してくれていた車に乗り、一人で学園に戻った。

松平が、快活な笑顔で拓海を迎えてくれた。
一緒に寮へ向かいながら、病院で被害を受けたと言っている生徒と会えなかったと伝えると、松平は残念だったな、と言って拓海の肩を軽く叩いた。

「これからどうすんだ? こっちも大した手かがりはまだ見つかんねぇんだよな」
「忙しいのに、すみません。でも、何とかなるかもしれないので、最後まで諦めないで足掻いてみます」
「そうなのか? ま、また何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます」

送ってくれた松平と別れた拓海は、鍵を開けて部屋に入った。
何となく気配を感じて、不思議に思いながら室内に入ると、ソファーに誰かが座っている。

「おかえりー。外出禁止なのに、ドコ行ってたわけ?」
「えっ、どうして……?」

金に近い、明るい髪と耳のピアス達が眩しい。なぜか、副会長が拓海の部屋にいた。

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