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拓海が連れて来られたのは、広大な敷地を有する総合病院だった。
病院の中央棟からさらに奥へ進み、白くて丸みを帯びた、何となく可愛らしい外観の建物の中に入る。ここで、カウンセリングを受けられるようになっているらしい。

建物に入ると、看護服を着た男性が、すぐに拓海達のもとにやって来た。そこで、拓海が話を聞きたかった生徒達が、学園に戻る手続きをした後、いなくなってしまったことを聞かされる。

「申し訳ありませんでした。ただ今捜索しているところなんです」
「恐らく、拓海の行動を知った何者かが、手引きをしたんだろう。ともかく、部屋へ案内してくれないか?」
「でも、先輩……」

こうなってしまっては、のんびりと病院で過ごすことは出来ない。拓海としては、今すぐに学園へ戻りたかった。

「もう日暮れだ。今から戻っても夜になってしまうから、何も出来ないだろう。明日の朝に帰ってからでも遅くはないさ」
「……はい。わかりました」

ずいぶん焦ってしまっていたらしい。考えてみれば、悠真の言う通りだ。
窓の外はすでに薄暗くなっているし、それに、拓海を心配していた河峰の手前、すぐに学園に帰らない方がいいのかもしれない。


消沈する拓海を連れて、看護師が案内したのは、広い個室だった。
室内には、小さめだがソファーセットが置いてあり、シャワールームも完備されている。

「うわっ、すごい部屋ですね」
「ここは学園生用に造られたようなものだからな」

備え付けの家具類は、落ち着いた色合いでまとめられていて、とても清潔感のある部屋だった。

拓海が室内を見回していると、悠真が案内してくれた看護師に労いの言葉をかけている。拓海もそれにならって口を開きかけたが、看護師が頬を染めながら、潤んだ瞳で悠真を見つめていたので、何も言えなくなってしまった。
悠真の魔性っぷりは、年上相手にも、いかんなく発揮されるらしい。

後ろ髪を引かれるようにしながら、看護師が退出するのを見送って、拓海はようやく口を開いた。

「先輩はこれから戻られるんですか?」
「いや、今日は俺もここに泊まるつもりだ」
「そうなんですか!?」

パッと表情を輝かせる拓海に、悠真も微笑む。
蓮達を救う手掛かりが潰えてしまった状況で、悠真の存在は拓海にとってとても心強いものだった。

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