拓海が自分の恋愛対象が男だと気付いたのは、中学生になってからだ。初めて好きになったのが、幼なじみの木崎遥都だったからだ。

遥都と知り合ったのは小学生の頃。母子家庭でアパート暮しの拓海と、資産家で大きな家に住んでいる遥都だったが、子どもにはそんな事など関係ない。近所の公園で出合ってからはよく一緒に遊ぶようになった。

遥都の母親がフランス人の血筋で、中学になると遥都の身長はみるみる伸び始める。サラサラな亜麻色の髪と相まって、さながら王子様のように成長した。
その上、どこかおっとりしているものの、思いやりがあっていざというときには頼れる存在ともなれば、遥都がもてないはずがなかった。

好きになったのが同性だったので、拓海はその事で少し悩んでいた。そんな時に、遥都が通っている私立の男子校では同性での恋愛がざらにあると知る。
それに慰められたのと同時に、物凄く不安になった。もしも、遥都に恋人ができて、おまけにその相手が男だったなら、拓海は相当な衝撃を受けてしまうだろう。

そうして拓海が中学二年、遥都が三年の頃。遥都の口からクラスに好きな子が出来たと聞いた時には、ついにきてしまったのかと、目の前が暗くなったのを覚えている。
いつも通りに振る舞いつつ、涙を飲み込みながら、遥都の好きな子ののろけ話を聞いていた。
その子の名前は「かずは」。漢字なんて拓海は知らない。

しかし、遥都が高校に上がる直前、失恋したと言って彼は拓海の前で泣いたのだ。
拓海は見知らぬ「かずは」を心中で呪いつつ、一緒にいられる時は遥都と過ごして彼を慰めた。
拓海と遥都は付き合い始めた訳ではなくて、友情の延長のようなもの。お互いに相手が必要だと思っていて、少し依存しあっているような関係だったのかもしれない。
遥都は拓海に甘えて、それを心地良く思いながら、まだ遥都から「かずは」の面影が消えていない事にも気付いていた。

一つ歳上の遥都は、先に高校生になった。高校からは全寮制だという所だったので、もれなく遥都も寮生活になった。
環境も変わり、新たな出会いがあれば、拓海と遥都の関係も変わるかもしれない。そう思っていたけれど、遥都は休みになれば拓海に会いに帰ってきて、それまでとは変わりのない関係のままだった。

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