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「うわっ、何っ!?」

ぬるりとした感触と、耳に直接響いた水音に、ぞわぞわと鳥肌が立った。
反射的に相手から離れようとして、腕を突っぱねながら藻掻く。すると、ネコのお面を被った男が近づき、拓海の両腕を頭上で押さえ付けてきた。
腕をがっちり固定され、足にはウサギ男が乗り掛かっているせいで、拓海は完全に身動きが取れなくなってしまった。

「これ邪魔だよな」

ウサギのお面を元に戻しながら男が呟いたが、お面を取る気はないようだ。顔を知られたくないということは、彼らは学園の生徒なのだろう。

拓海は舐められた耳を拭いたくて仕方なかったが、ウサギ男に着ていたカーディガンのボタンを外されて眉を寄せた。

「……何のつもり?」
「何って、イタズラ?」

イタズラとは言っても、この状況では単なる悪ふざけというわけではないのだろう。脅されるだけだと思っていたのに、どうしてこんなことをしようとするのか分からない。眉に皺を寄せたまま、拓海は相手を見上げた。

「下手な詮索をさせないってのもあるけど、口止めも兼ねてんだ。他の男にイタズラされちゃ、木崎に泣きつけねえだろ? うわっ、すげぇ乳首処女ピンク」

シャツを捲られ、露になった肌を撫で回される。
生温い手が気持ちが悪くて身を捩るが、胸の辺りを引っ掛かれて拓海の体がぴくりと跳ねた。

「ビンカンだけど開発されてねえじゃん。何、木崎はここ弄ってくれないの?」
「そんなことするわけっ、んあっ」
「可愛いな」

痛いほど乳首を摘まれて、変な声が出てしまった。
羞恥に顔を染めた拓海をウサギ男は目を細めながら見つめてくる。その視線に何かが籠もったのを感じて、拓海の恐怖心が大きく芽吹いた。

「木崎のことだから、どうせお上品にしか抱かれたことがないんだろ」

どういうわけか、遥都との関係を勘違いしているらしい。拓海をあざけるように言った言葉を首を振って否定した。

しかし、拓海の否定は軽く流され、乳首への刺激が強まる。
両方の胸を摘んで、人差し指で頂をこねられる。ただ痛くて不快なだけで、拓海はそこから何も感じないけれど、しゃぶりてぇと呟かれて、耳を舐められた感触が蘇った。ぶるりと体を震わせると、ウサギ男は声を立てて笑う。

「最後までしねえよ。強姦すりゃ後が怖いからな。けど、素股は全員分な」
「スマタ……?」
「スマタとか片言かよ。まさか知らねえの?」

知ってるけれど、耳慣れないせいで、一瞬何のことか分からなかっただけだ。
中学時代、友人とも卑猥な話はしなかったし、学校と家の往復ぐらいしかしてこなかった拓海は、性的なことには疎い。
拓海にとって殆んどが未知である行為を一方的に強いられようとしている。漠然としていた恐怖が、色を持って現実的になり始めた。

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