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悠真に満面の笑みを向ける和葉を見た戸谷は、うなだれるように目を伏せた。

和葉はというと、今度は悠真の腕に自分の手を絡ませる。そして下から覗き込むようにしながら話しかけていた。

「ユウマ、お昼ご飯は?」
「とっくに済ませた」
「そうなんだ。じゃあ、休憩の時におやつ持って行くね」

悠真は軽く溜息をつくと、やんわりと和葉の肩を押して自分から離す。

「ああ。じゃあな」
「あっ、ユウマ」

お座なりに返事をすると、悠真は生徒会室に向かって歩きだした。

「ユウマ……」

素っ気ない悠真の態度に、和葉は大きな瞳を潤ませる。悠真の後ろ姿をじっと見つめている和葉に、三枝が慌てたように近付いた。

「食堂でみんなが待ってるから行こう」
「……うん」

細い肩を抱くようにしながら、三枝は和葉を促した。

和葉がおやつを待って遊びに行くのはいいらしい。ある程度和葉を許容している悠真に、モヤモヤした気分になった。
生徒会室も風紀室と同じ階にあるので、こういったことは度々あるのかもしれない。

「戸谷君、一緒に行ってきたら?」

和葉にすっかり存在を忘れられてしまっていた戸谷が気の毒で、そう声をかけた拓海を戸谷はギロリと睨んだ。

「俺は、お前といるんだよ」
「……あ、そう」
「水島さんがてめえの傍にいたのは納得できねぇが、あの人がそうしてたんなら仕方ないからな。だからって、調子にのんなよ。わかったか?」
「水島君のお友達なんだ」
「バッ……! あの人は誰ともつるまねえんだよッ」

戸谷は、心底疎ましげに拓海を睨み付ける。
彼は水島に心酔しているらしい。誰ともつるまないという水島が、拓海と一緒にいたのが、戸谷は気に入らないのだ。

「あー、そうなんだ」

あまり水島の話はしない方がいいのだろうと思い、軽く頷いた拓海は風紀室に向かった。


「すみません」

ノックをしながら風紀室のドアに向かって声をかける。なかなか開かないので、ノックを繰り返していたら、急にドアが開いた。

「るせぇ……、ってお前さっきの」
「藤沢です」

拓海を見て眉間の皺を寄せたのは、先ほど松平と呼ばれていた先輩だった。

「水島君に面会できますか?」
「駄目だ」
「水島君は今どんな状態なんですか? きちんと食事をしているんでしょうか。いつまで拘束しているんですか?」
「あーっ、うるせぇ! お前帰れよ」
「無理です。絶対に嫌です」
「だーっ、めんどくせーっ!」
「どうした、松平」

吠えた松平の後ろから、河峰の声が聞こえてきた。

「河峰先輩。お話しがしたいのですが」

河峰が、松平の向こうに姿を見せる。拓海を見て軽く眉を上げた河峰が、松平の前に出て大きくドアを開いた。

「……わかった。入りなさい」
「ありがとうございます!」
「うえっ、マジっすか」

嫌そうな松平の声がしたが、拓海は構わずに戸谷を呼ぶと、一緒に風紀室に入った。

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