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拓海の腰に腕を回す遥都の髪がさらりと揺れる。

拓海がはっとして常磐を見ると、彼は穏やかな眼差しで遥都を見ていた。親衛隊の隊長である常磐は、遥都のこんな姿を見ても嫌ではないのだろうか。
そんな拓海の視線に気付いた常磐は、拓海に向かって微笑んだ。

「木崎さんがこうして甘えられるのは、藤沢君だからなのでしょうね」
「俺と遥都は幼なじみだから……」
「私が気になりますか?」

質問に答えられずにいると、遥都の腕に力が籠もった気がした。

「私は木崎さんへの恋愛感情はありません。ただ、木崎さんが、穏やかに充実した学園生活を送ってくださればそれで満足なのです」
「常磐は僕の監視役だよ」

ゆっくりと拓海から離れた遥都が、ソファーに背を預けながらつまならそうに言った。

「監視役?」
「そうだよ。木崎家とはビジネスパートナーだからね、常磐の家は。僕がへまをして、木崎家に傷が付かないようにしているのさ。そんな事より、拓海。昨日会長の親衛隊と接触したんだって?」
「えっ、……うん」

遥都がそんなこと、と言い捨ててしまった常磐との関係だが、そんなふうに殺伐とした雰囲気は感じられない。本当にそれだけしかなかったなら、拓海はもっと苦い気分になっていただろうけど、それだけではない繋がりがあるように思える。

「会長の親衛隊はなんていうか、だいぶ特殊だけど、大丈夫だった?」
「うん。助けてもらっただけだから」
「先ほども羽二生さんといらっしゃいましたが、あの方にしては珍しく、藤沢君のことを気にかけているようでしたね」
「そうなの?」
「そうでしたか?」

同時に声を出した拓海と遥都が、お互いに顔を見合せた。

「羽二生君には気を付けて。凄く意地悪らしいから」

きっと羽二生にサディステックな一面があると言いたかったのだろう。遥都は真剣な表情だったが、その言い回しに思わず笑ってしまった。

「笑いごとじゃないのに」
「ごめん、ごめん」
「藤沢君、水島の代わりの人物に護衛の要請します。今後はその方と行動を共にしてください。中瀬親衛隊とは、なるべく関わらない方がいいでしょう」

水島の代わりと聞いて、途端に拓海の心が沈んだ。
それに、友人として水島と関わっていたつもりだっただけに、護衛という言葉に複雑な気持ちになる。

「本当は僕がずっと一緒にいたいんだけどね」
「遥都と一緒にいたら、俺まで注目浴びちゃうよ」
「本気なのに」

遥都が、眉尻を下げて拗ねたように言う。

「ごめんて。遥都は忙しいからね。そうだ、お昼作るんだけど、時間があったら食べて行かない?」
「うん、食べたい」

ぱっと笑顔になった遥都に、拓海の頬が緩む。
常磐も誘ってみたが、彼は約束があるらしく、遥都と二人で昼食を食べることになった。

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