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「こんにちは、藤沢君」
「常磐先輩、水島君が……」

不安だったところへ、水島をよく知る常盤が現れたので、拓海は縋るように常磐へ視線を向けた。

「水島のことは聞きました。羽二生さん、藤沢君は私が送ります」
「うん、その方がいいよな。じゃ、よろしく!」

笑顔で手を振ると、羽二生は職員棟から出て行ってしまった。教師に用事があったと言っていた気がするが、良かったのだろうか。
そう思いながら羽二生が行ってしまった方向を見ていると、傍に来た常盤が、そっと拓海の肩に触れた。

「水島が目の前で連れていかれたんですね。ショックだったでしょう」
「……驚きました。水島君は自分はやっていないって言ってたのに……。すぐに戻れるんでしょうか?」
「それは、わかりません」
「無実なのに?」
「藤沢君は信じてくださっているんですね。ですが、今のところ彼に不利な証言があるので、無実を証明するのに時間がかかる恐れがあります」
「それがもし証明されなかったら、どうなるんですか?」
「停学にはなるかと思います。よっぽどのことがない限り、退学にはなりません。学園の醜聞にかかわりますから」
「そうですか……」

退学にはならなくても、無期停学になってしまえば、留年してしまう恐れもある。
第一、水島も蓮も加害者ではないのだから、処分される謂われはないはずだ。冤罪など、あってはならないのに、水島たちが犯人だと証言している生徒は、一体どういうつもりでいるのだろうか。

「藤沢君、木崎さんがあなたに会いたがっていますが、これから時間はありますか?」
「遥都が? 俺も会いたかったし、大丈夫です。俺の部屋がいいですよね」

常磐が頷いたので、そのまま二人で拓海の部屋へ戻ることになった。


◇◇◇


常磐と共に部屋に戻り、拓海が紅茶を用意していると、すぐに遥都も部屋を訪れた。

玄関を開けて、目の前に立っていた遥都と視線が合うと、飛び付くように拓海を抱きしめてくる。

「拓海!」
「わっ、遥都……!」

勢いのあまり、後ろに倒れそうになった拓海をしっかりとした腕が支える。その力強さと、遥都の温もりが、拓海の不安だった心を落ち着かせた。

拓海の髪に、顔を埋めるようにする遥都の亜麻色の髪を拓海もゆっくりと撫でる。

「部屋に入ろう、遥都」
「うん、そうだね」

最後にもう一度、遥都は確認するように、拓海を抱きしめる腕に力を込めた。


「常磐先輩と遥都にはご心配をおかけしました」

ソファーに座る二人に、拓海は深々と頭を下げる。
隣に座っていた遥都が、再び拓海の体に抱きついてきた。

「無事でよかった……」

遥都の心からの安堵の言葉に、拓海は後ろめたい気持ちを隠す。
本当のことを遥都に知られて、これ以上煩わせては駄目だと拓海は思っていた。

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