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悠真の男前過ぎる発言に、拓海はクラクラするくらい感動していた。
けれど、悠真は拓海を過大評価しているように思う。

「先輩が、俺にそこまでしてくれる理由がわからないです」
「理由か。そうだな。この学園で、私利私欲に走らない、拓海のような存在は貴重だ。自分の利害を考えることは大切だが、未熟な奴らは利益にこだわって、己のことしか見えなくなりがちだ。拓海を見ていれば、そいつらにも考え直す好機があるかもしれない」
「先輩、買い被りすぎですよ。俺だって自己中だし、そんな大層なこと出来ないと思います」
「別にそれで構わない。拓海はただ、普段と同じように過ごしていればいいんだ」
「普段通り……」

私利私欲に走らないというより、ただの貧乏性で多くを望めないだけだ。そんな拓海の行動が、簡単に誰かに影響するものなのだろうか。
自分のことは客観的に見ているわけではないし、その辺りのことはよくわからないけれど、拓海自身が悠真に認められたようで嬉しかった。

「先輩が言うと、本当にいつでも助けてくれそうです」
「当然だ。ハッタリかどうか、拓海は見ていればいい。ただし、すべては俺が学園にいる間だけだ。その間にお前は力をつけておけよ」
「はい。先輩みたいにはなれないと思いますけど、努力はします。それに、あんまり迷惑かけないようにもします……」

そうそう今日みたいな場面には出くわさないとは思うけど、自力で何とかできるようにはなりたいと思う。
そのためには、仲間を作ったり知恵を養うことが必要なのだろう。

くすりと笑った悠真が、あれこれ考えている拓海の頭を軽く撫でた。子ども扱いされているみたいだけど、嫌な気にはならない。
そんな悠真の顔を見上げて、拓海は気になっていることを聞くために口を開いた。

「先輩はどうして俺たちの居場所が分かったんですか?」
「ああ、実は親衛隊に篠宮をこっそり見張らせていたんだ。余計な噂が立ってしまったから、表立って張りつかせていると余計に篠宮が目を付けられるからな」
「そうだったんですか」

さすが抜かりがないというか、悠真の采配に感謝しなければならないだろう。

「だが、別の場所で騒ぎが起こって、その隙に篠宮が連れ去られたらしい。篠宮がいなくなった場所から、その付近の隠れられるような場所を捜索しに行かせていた。その間に、拓海が篠宮を探しに行ったと連絡を受けたんだ」
「それで、わざわざ先輩まで来てくれたんですか?」
「俺が目をかけている後輩のことだからな」
「ありがとうございます」

悠真にとって、拓海は手のかかる後輩なのだろう。
そのせいで悠真を煩わせてしまったのは申し訳なく思うけれど、悠真自らが助けに来てくれて本当に良かった。見知らぬ親衛隊たちだけだったら、こんなに落ち着いてはいられなかったかもしれない。

「噂って、校内新聞のことですか。会長補佐のことは本当なんですか?」
「全てが本当のことじゃない。あれは篠宮には関わりないことだが、噂のせいで再び嫌がらせがあるかもしれない。それについて言明しようと思う」
「ぜひお願いします。蓮は会長補佐にはならないんですね」

ならば、和葉にはその可能性があるということなのだろうか。
拓海はそんな自分の考えに眉を寄せた。

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