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「中には純粋な会長愛好者もいますけど、大半は会長警備隊みたいなもんなんですよね」
「警備隊、ですか?」
「そうです。大げさに言えばSPみたいなものです。でも、最近では風紀の仕事もしてたりしますよ。あいつらホント役立たずなんで」

隊長は輝く白い歯を見せながら、爽やかな笑顔でさらりと毒を吐いた。
どうやら、悠真の親衛隊は他の人たちの親衛隊とは違うようだった。助けに来てからの経緯を見ていると、何か特別な訓練をしているのかもしれない。
鍛えられているから、身軽に見えるのだろうか。拓海がそんな隊長を見ると、隊長はニコニコしながらずっと拓海を見ている。
何となく、その視線が痛く感じるのはどうしてだろう。

「おい羽二生、あんまり見るな。拓海もこいつには気を付けろよ」
「えっ、何をですか?」
「もう遅いですって。今どきいませんよこんな子。あの状況から助けられて、開口一番が友人の心配だったんですからね。藤沢君みたいな子は、そうだなあ……、周りからゆっくり囲んでいって、逃げ場を無くしたところで、じわじわと追い詰めて泣かせてみたいかな」

毒を吐くどころではなかった。
爽やかな表情を崩さずに言った隊長に、拓海は空耳か何かかと思いたくなる。

「こいつは人畜無害を装った変質者だから、見た目に騙されないように」

悠真の言ったことに、拓海は呆気にとられたまま頷いていた。
でも、拓海を助けてくれた時のことを思い返せば、隊長が悪い人には思えなかったし、悠真の親衛隊の隊長をこなすくらいなのだから、それなりの人物なのだろう。
拓海がそう考えていると、腰を支えていた悠真の腕がゆっくりと離れた。
もうふらつくことはなかったが、離れた悠真を追うように見上げると、彼は自分のネクタイを引き抜いて、拓海の首に巻いてくる。

「先輩?」
「これで応急措置だ」

いくつかボタンが無くなってしまったシャツの襟元をネクタイで抑え、ブレザーのボタンを留めると、多少は見られるようになった。

「あ、ありがとうございます……」
「いや、もっと早く来られればよかったんだが。どういった経緯があったのか、寮に帰ってから話してくれるか?」
「はい。でも、先輩よくここがわかりましたね。蓮が攫われたの分かったんですか?」
「それも寮に戻ってから話す」
「わかりました。悠真先輩と羽二生先輩、助けていただいてありがとうございました。あの、もし大丈夫でしたら携帯をお借りしてもいいですか?」

水島と会話中に携帯を壊されてしまったので、今ごろ騒ぎになっているかもしれない。
水島から遥都にも連絡が行っていたら、常磐たちにも迷惑がかかっている可能性もある。
それを悠真に伝えると、隊長である羽二生から拓海の無事を伝えた方がいいということになった。

「学園のセキュリティはしっかりしてたはずなのに、侵入者があったんで、ちょっと問題が大きいんですよね。風紀や教師も間もなくこっちに来ると思うんで、面倒になる前に二人は寮に戻ってください。会長がこっちに来ちゃったのが風紀に知られるとことなんで、バレないように上手く誤魔化しときます。藤沢君のピンチだからって後先考えないから」
「羽二生、口が過ぎる」
「はーい、すみません」

羽二生の台詞に驚いて顔を上げると、悠真は首を横に振った。

「拓海、先ずは寮に戻ろう。落ち着いたら木崎と直接話せばいい」
「はい、わかりました」
「あ、藤沢君、念のために頭からこれを被って行ってくださいね」

そう言って羽二生が渡してきたのは、アニメに出てくるような女の子の顔をした被り物だった。

「ここにあったんですけど、美少女着ぐるみって言うらしいですよ」
「な、何でこんなものが」
「ニーハイ付きの学生服やワンピースもありますけど」

どうします? と尋ねられて、拓海は美少女顔の被り物だけ借りることにした。

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