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不意に、背後に気配を感じた。
拓海が振り返ると、すぐ後ろに体格の良い大柄な生徒が立っていた。

『藤沢、どうした?』

電話から聞こえた水島の問いに答える前に、ニヤリと笑ったその生徒が、拓海を簡単に担ぎ上げてしまった。

突然のことで驚く間もなく、拓海は米俵のようにその生徒の肩に抱えられる。腹部が圧迫された上に頭も逆さまになり、思うように声が出せなくなってしまった。

落としてしまった拓海の携帯が踏みつけられて、無惨な姿になっているのが視界に入る。
大柄な生徒は蓮の携帯を拾い上げると、拓海を担いだまま、どこかに移動を始めた。

「暴れるな」
「っ……!」

拓海を抱える生徒の背中を乱暴に叩いていると、お尻を撫でられしまった。鳥肌をたてながら、拓海は声にならない悲鳴をあげる。
蓮も、この生徒に連れて行かれてしまったのかもしれない。拉致監禁暴行といったよくないフレーズが、拓海の脳裏を過った。

上半身が逆さ吊りで頭に血が上り、お腹も辛い。
拓海が目眩を起こしそうになった時、どこかの建物に入って行くのがわかった。ドアを開けて、室内に入って行く。

「お前、どうしたんだよそれ」
「そいつの携帯拾うついでに持ってきた。いいからお前らは続けろよ」

室内には何人かの気配があった。この生徒の仲間がいるらしい。
拓海はようやく下におろされるが、クラクラと視界が回っていたので、すぐには動くことができなかった。
しかし、荒い呼吸と楽しげに笑っている男たちの声が聞こえてきて、嫌な感じがした拓海は、無理矢理上半身を体を起こす。

「……蓮!」

急に動いたため目眩を起こしたのか、チカチカする視界の向こうに、床に横たわる蓮と、そのそばに二人の生徒がいるのがわかった。

「やっぱり知り合いだったんだな」

拓海を連れてきた大柄な生徒が、拓海の後ろから肩を掴んで拘束してくる。
拓海を簡単に担いできた相手に適うはずもなく、身動きが出来なくなってしまった。

「蓮に何をするつもりですか?」
「これから俺たちがたっぷり可愛がってあげるんだ。その様子を写真に撮らなきゃいけないしな」

そう言って、大柄な生徒は蓮の携帯を拓海に見せた。

「これで、そいつの知り合いに一斉送信。せっかくだから、あんたには生で見せてあげる」

目眩が治まって、蓮の様子がわかるようになった。
蓮は、意識がないのかぐったりしていて呼吸がとても荒い。
ブレザーはすでに脱がされて、一人の生徒が蓮のシャツを開いている。もう一人の生徒が、蓮のズボンを脱がせているところだった。

蓮に何をしようとしているのかがわかった。暴行は暴行でも、まさか男相手にそんな行為をしてくるとは。
写真を一斉送信など、話の内容から考えれば蓮に対する嫌がらせが目的だろうが、これは度が過ぎている。

「今すぐ蓮から離れて」

蓮の方へ身を乗り出す拓海を後ろから大柄な生徒が引き寄せる。腰に腕を回されて、拓海が動けないようにしっかり捕まえられた。

「クスリも効いてるし、今更やめられないんだよ」
「クスリ……。どうしてこんなこと」
「楽しいからさ。あんたも一緒に楽しもう」

拓海を片手で拘束したまま、大柄な生徒が拓海のネクタイを解き始めた。

拓海は、蓮が幸せそうに好きな子の話をしていたのを思い出した。その子と結婚もしたいと言っていたのだ。
この生徒たちに、蓮を好きにさせては絶対にいけないと思った。

「それ以上蓮に触らないで! ウ、ウイルス性の胃腸炎だから」
「……おい、助けたいからって、嘘を言うのはやめろよ」

拓海のネクタイを引き抜いた生徒が、焦ったように言った。

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