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オリエンテーリングの開始時間が近づいたので、拓海と水島は遥都たちと別れて体育館へ戻った。
始まる前に蓮と会っておこうと思い、それを水島に話すと、呆れたような表情をされてしまう。それでも止められることはなく、「じゃあ、先に行ってるから」と言って、水島は先にクラスの列へ戻って行った。

拓海が一人でいる蓮を見つけて話しかけると、近くにいた生徒たちが注目してくるのがわかる。色んな意味で、周りが蓮を気にしているらしい。
当の蓮は、拓海に話しかけられると微妙な表情になった。

「大丈夫だった?」
「大丈夫だったじゃなくて、今俺に話しかけない方がいいぞ」
「蓮だって、こんな状況なのにオリエンテーリングに参加するんでしょ」
「当然だっての。行事に参加して点数上げとかないと後で困るんだからな。拓海だって特待生なんだからわかるだろ」
「うん、そうだったね」
「だったらさっさと行きなって」
「蓮、もしも何かあったら連絡してね。俺でも水島君でもいいから」
「さっき風紀の奴らにも、似たようなこと言われたぜ」

拓海が散々遥都たちから言われたことを口にすると、蓮自身も、きっと嫌がらせがあるだろうと分かっているのか、うんざりした表情で言った。

生徒たちから注目を浴びる中、蓮と別れてクラスへ戻る。ちょうどオリエンテーリングが始まる時間になった。
ペアになる橋本のそばに行くと、橋本もぴょんぴょん跳ねるようにしながら、拓海のそばにやって来る。

「よろしく、橋本君」
「うん、よろしくねー。えへへっ、今日楽しみにしてたんだー」

嬉しそうな橋本の笑顔と元気な様子に、憂うつだった拓海の気分が癒されたような気がした。

二人で地図が印刷されたプリントを広げながら、チェックポイントを確認する。はじめは、校舎内にあるポイントからスタートだった。

「ええっと、これが北だからー。うーん」
「ここが俺たちのクラスだから、音楽室かな?」
「あっそうだね。じゃあ、音楽室に向かって出発ー!」

体育館から少し離れているが、まあ近い方かもしれない。
それぞれが動き始める中、拓海と橋本も歩き出した。

寮と並び、校舎も東西に弧を描くようにのびている。北にあるのが寮で、整備された公園のような広い庭を挟んで校舎がある。
校舎の南側に、校庭や体育館、室内プールや部活棟がある。
この学園全体の周りをぐるりと木々が取り囲んでいて、そこには校門から続く主要な道の他に、プロムナードのような小路もいくつか通っている。
林の中にもポイントがあるので、チームによっては学園の端から端まで移動しなくてはならないところもあるようだ。


「試練って、どんな感じなんだろうねー」

しばらく歩いたところで、橋本が興味津々といったように言った。
ポイントには、二、三年生がいて、それぞれが試練と言う名の問題を出してくる。それを乗り越えないと、チェックがもらえないことになっていた。
不安があまりないような橋本だが、先ほどうさぎ跳びをしているチームを見かけたので、ポイントによっては拓海にとって厳しい試練が待ち受けているかもしれなかった。

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