水島は、拓海を奥にいる遥都の方へ押しやると、自分は腕組みをしながら出入口のドアに寄りかかった。

拓海はそのまま奥へ進み、近くにいた常磐に挨拶をしようとしたところを、急に遥都に引き寄せられる。少し驚きながら遥都を見上げると、彼は不安そうな表情をして、確認するように拓海を見つめていた。

「拓海、制裁に巻き込まれたんだって?」
「俺は大丈夫だよ。水島君もいてくれたし」

拓海が答えると、遥都はちらりと水島を見てから、再び拓海へ視線を戻した。

「そう。篠宮君は気の毒だったけど……」
「やっぱり今朝の嫌がらせって、校内新聞が原因だったのかな」
「恐らく、そうだろうね」
「遥都は会長補佐のことは何か知ってる?」
「会長補佐については、全て会長が取り仕切って進めることになっているんだ。だから会長が言わない限り、僕には候補がいるのかさえもわからないんだよ」

会長に近い生徒会役員でも、発表があるまではわからないと言う。それなのに、平木はどこから会長補佐の情報を手に入れたのだろうか。
拓海がそう考えていると、静かに控えていた常磐が口を開いた。

「ああいった新聞が出てしまったからには、会長から何らかの言明がないと収まらないでしょうね。篠宮君については、引き続き生徒会長との噂の出所を調査していますが、その前に会長ファンの制裁対象になってしまうかもしれません」
「やっぱり、そうなんですか? 風紀は様子を見てくれるそうですが……」

水島の話を聞く限りでは、その風紀委員に対しても不安がある。
蓮が悠真に好意を寄せていると勘違いされている上にあの校内新聞だ。つくづく、蓮は災難続きだと思った。

「それでね、拓海。オリエンテーリング中はくれぐれも気を付けてほしいんだ」
「どうかしたの?」
「オリエンテーリングのチーム分けが、何者かによって改ざんされていたんだ」
「改ざん?」
「そう。直前のことだったから、そのことに気付いた時には遅かったんだ。何か目的を持ってチーム分けを変更させたんだろうね」
「秘密裏に生徒会のデータベースに侵入する、それだけ大掛かりなことをするのは、一般の生徒ではないと考えられます」
「だから、もし何かあったらすぐに僕たちに連絡して」
「何かって、俺の方は大丈夫だと思うけど……」
「今は藤沢君も何かと注目を集めているので、万が一のためです。藤沢君と組む橋本君にも、水島の連絡先を知らせておいてください」

すでに、拓海が橋本と同じチームだと知っていたらしい。
拓海は頷きながら、もしかしたら蓮の方を気にしておいた方がいいのかもしれないと考えていた。
今朝のこともあるし、今一番注目を集めているのは蓮なのだから。

「ちょっと待った。だからって、自分からその何かってのにわざわざ首を突っ込まないでよ」

それまで黙っていた水島が口を挟んできた。
拓海の思考を読まれていたような気がして、内心ドキリとする。

「あんたの熱血っぷりだと、絶対危ないと思う」
「拓海……」

水島の台詞を聞いて、遥都が再び不安そうな表情になった。遥都も同じように思い当たったようだ。

「大丈夫だよ。もしもの時には連絡するから」
「絶対だからね」

信用がないのか念を押すように言われて、拓海は大きく頷いた。

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