水島が担任と共に教室に戻ってくると、すぐに新入生歓迎会の開始時間になった。
クラブ紹介が行われる体育館に移動する途中、拓海は話しをするために水島のそばに近づいた。

「さっきはありがとう」
「いいえー」
「風紀は何か言ってた?」
「委員長は新歓の方に回ってていなかったんだよね。とにかく、しばらくは様子見だって。仕掛けたの親衛隊じゃないみたいだし。取り敢えず、今日は見回り強化してるらしいから、オリエンテーリングも注意しとくらしいよ」
「今日だけ……? 水島君は校内新聞のことは知ってる?」
「ああ、さっき見た。だから篠宮を個人的にガードしてもいいもんだけど、様子見てから決定するんだってさ。ま、今の風紀もいまいち信用できないし。山岸先輩のライバルなら、なおさらなんじゃないの?」
「そんな、だからって蓮が傷ついてもいいってこと?」
「そうなれば、願ったり叶ったりなんじゃない」

水島の話を聞いて、拓海は眉をしかめた。
蓮が悠真に好意を寄せているという誤解を早く解いた方がいいのかもしれない。会長補佐についても、直接悠真に話を聞いてみようと思った。


体育館に一学年の生徒たちが集合すると、司会進行の森崎が舞台に登場した。生徒たちの歓声を受けながら、相変わらず淡々とした口調で今日の流れが説明される。

そんな森崎を見ながら、拓海は昨日のことを思い出していた。
あの時、和葉を連れて行く森崎と確かに視線が合った。
森崎は何を思っていたのだろうか。拓海は、そんな森崎のことも気になっていた。

クラブ紹介が始まると、各部活が実演しながら、それぞれの特色がよくわかるように活動内容が説明される。部員獲得のために創意工夫されていて、楽しみながら見ることが出来た。
文武両道が謳われるだけあって、各部活の経歴は目を見張るものがあるが、きっと練習もそれなりに厳しいのだろう。

中学時代、拓海は家事もこなしたかったので、練習時間に縛られるような運動系の部活動はやってこなかった。運動は苦手ではないが、体力には自信がない。
部活に入るなら、文化系から選ぶつもりでいた。

クラブ紹介の後は、敬遠したかったオリエンテーリングの時間だ。
密かに、雨でも降れば外を回るポイントがなくなるかもしれないと思っていたけれど、今日はあいにくの晴天だった。
森崎の説明によると、オリエンテーリングはランダムに決められた二人組みのチームになるようだ。三ヶ所のポイントを順番通りに回り、チェックをもらってゴールを目指す。
ポイントの場所はチームごとに異なっていて、渡された地図を見ながら探さなくてはならなかった。

チーム分けのプリントを見ると、拓海の相手は橋本だった。
橋本が拓海に向かって小さく手を振っているのが見える。その姿が可愛くて、思わず微笑みながら手を振り返した。
水島と蓮の相手は、クラスも違う拓海の知らない生徒だった。

オリエンテーリングが開始される前に、10分の休憩時間が設けられた。
水島が拓海を手招きしたので、歩き出した水島の後を追う。体育館の通路にある、何かの部屋らしきドアを開けて入って行った。それを不思議に思いながら、拓海も後に続くと、部屋の中には遥都と常磐がいた。
折り畳み式のイスがたくさん並べられたここは、用具室の一つなのかもしれない。
こんなところにいても、遥都は変わらないノーブルな雰囲気を纏っていた。

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